大盛況に終わったトミー・ゲレロのジャパンツアーを振り返る[ライブレポート]

January 05,2017 | Category :  Article | Tag :  TOMMY GUERRERO,

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2016年12月7日にニューアルバム『The Endless Road』をリリースしたトミー・ゲレロが、12月にジャパン・ツアーを開催した

全国9ヶ所を駆け抜けたツアー。トミー・ゲレロとオーディエンスとの距離感が極めて近く、まるで彼の部屋で行われているかのような、ゆったりとした揺らぎを感じさせるライヴだった。

始まりは雨の新潟からだった。カフェ、Gioia Mia。オープニング・アクトが会場の空気を温め、ひとしきり落ち着いた雰囲気となった中、トミー・ゲレロがステージに現れた。特にライヴに対する激しい意気込みは感じられない。リラックスした雰囲気でステージに置かれている椅子に腰掛け、すっと傍に置かれていたギターに手を伸ばす。ステージには赤い色合いのラグが敷かれ、その上にはポツンと小さな机が置かれている。机の上には暖かな明かりを灯すランプがひとつ、トミーの姿を浮かび上がらせている。彼の後ろには、車窓からの風景を撮影し、編集したロードムービーの一片のような映像が流れている。まるで誰かの部屋でぼんやりとビデオを見ながら、くつろいでいるような雰囲気だ。トミーは来日前に、こんなことを話してくれていた。

「“The Endless Road”ジャパン・ツアー2016では、今までと違うことがやりたかったんだ。特に日本でツアーするに当たっては、少し前にブラックトップ・プロジェクトとしてジャパン・ツアーを敢行したばかりだから、自分名義のツアーとして、何か新しいことに挑戦したかった。アーティストとして、同じことを繰り返したくないんだよ。ブラックトップのメンバーでもあるドラムのチャックとベースのジョッシュは、ソロのバンド・メンバーでもあるから、また同じメンバーで日本に戻りたくなかったんだ。似たようなライヴを繰り返したくなかった。俺もファンも退屈しちゃうからね。だから、アルバム『The Endless Road』の曲をいくつか7インチ・レコードとしてリリースして、リリース・パーティっぽくDJをして、DJセットをやる前に、ソロのライヴを披露する。そんなパーティっぽいものにしたかった。そうすればお客さん達が踊ったりして、楽しめるだろ。それからファン同士が交流できるイベントにもしたかったんだ。ステージ上のバンドにだけ集中するんじゃなくて、オーディエンス同士がしゃべりながら、新しい音楽を聴ける環境を提供する。そうしたほうが、ファンともっと交流できるだろ。今回のツアーは、今までと違う内容のイベントになるし、スペシャルになると思う。普通のライヴとは違う内容になるよ」

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空間を満たすトミー・ゲレロのギターの音色

トミーは気持ちをリラックスさせるように、ギターの指板に指を置き、フレーズを奏で始める。オーディエンスは固唾を呑むように、トミーを見つめている。ランプの光だけが、トミーの姿を浮かび上がらせる。そこはステージと言うより、トミーのプライベート空間のようだ。まるで自分の部屋に友達を招き入れ、そこでライヴを披露しているようだ。これがトミーの見せたかったツアーの世界観なのだろう。イントロを弾いていたトミーが、ループ・ステーションのペダルを踏む。同時に彼があらかじめ打ち込んできた、音が鳴り響く。トミーのニュー・アルバム『The Endless Road』のオープニング曲「el camino negro」のイントロだ。緩やかに流れるベースのビート。ドラムスが跳ねるようなグルーヴを打ち出す。そんな音の上層で、トミーのギターが奏でられる。中東アフリカやはたまた中南米の音を意識したような印象的なフレーズ。トミーならではのオリジナリティに溢れたフレーズ。

「『The Endless Road』と言うタイトルの持つ意味は、前作『Perpetuum』に似ているんだ。“常に探求しながらも、目的地はない”という意味だね。俺が作る音楽には常に自分らしい要素が入っているし、楽器の演奏に独自のアプローチがあるから、何があっても自分のサウンドだと分かるはずだ。でも、常に学ぶことはあるし、成長、進化はエンドレスなんだよ。死ぬまでそのプロセスは終わらないね。そして前作がメロウで空間的なサウンドだったから、今回は躍動感とグルーヴ感を前面に押し出したサウンドにしたかったんだ。このアルバムでは、全ての楽器をなるべく一人で演奏したいと思った。ドラム、パーカッション、コンガなどの打楽器類も、自分で叩いているよ。ドラマーのチャックが参加しているのは2曲だけ。ドラムやパーカッションを自分で叩いて、それをループにして、曲の土台にする。ここまで自分でリズムを作り出したのは初めてだよ。一人でなるべくベストを尽くす、ということが今回のアルバム・コンセプトだったかもね」

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トミーが「el camino negro」を弾き終える。オーディエンス達は拍手を忘れている。あまりにトミーとの距離感が近かったためか、少し驚いてしまったのかも知れない。一人一人が息を詰めているかのように感じられた。トミーの紡ぎだす音は、緩やかなものだが、その中にはエモーショナルな気持ちが痛いほど感じられる。小さなステージとフロアの位置は驚くほど近い。トミーの音をダイレクトに受けて、彼が出すサウンドにオーディエンスは気圧されてしまったようだ。トミーは淡々と次の曲「a distant closeness」を弾き始める。この曲もアルバム『The Endless Road』に収録されている。空間を漂うようなドリーミーなサウンドは、トミーならではのものだ。2曲目の演奏が始まる頃になると、オーディエンスは、ライヴの雰囲気に慣れてきたのか、身体を揺らして音の世界に陶酔し始める。前方では床に座り、リラックスしながら音を楽しもうとする人達も出はじめた。ステージ上ではトミーが足元に広げられたペダル類を駆使して、音を創っている。リヴァーブで音を揺らし、エコーで音の世界に深みをもたらしている。ゆらりと揺れる音がカフェを包んでいく。

「最近は、よくムラトゥ・アスタトゥケのようなエチオピアン・ジャズを聴いているよ。ティナリウェンなどの”砂漠ロック”も大好きだね。彼らのトレモロやリヴァーブ、ディレイを使ったサウンドに心酔している。彼らの音楽はある意味、俺の音楽と似ているんだ。とても幻想的なサウンドで、複数のギターを重ねることで作り上げられてる。ドリーミーでありながら、すごく深みのある音なんだ。とてもスピリチュアルな音楽だし、聴いていると引き込まれる。音楽は、俺にとってスピリチュアルなものだから、きっと彼らの音楽に惹かれるんだと思う。俺が音楽を作る時は、頭で考えることよりも、フィーリングを大切にしている。あれこれ考えて音を作るんじゃなくて、今の瞬間に身を委ねて演奏することで、いろいろなアイデアが降りてくるんだ。だから今回のアルバム『The Endless Road』では、エチオピアン・ジャズ、アフロ・ビートなどを、今まで自分がやってきたサウンドに取り入れることにしたんだ」

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約一時間に及ぶライヴは終盤に入り、トミーの音はますます濃厚なものになっている。音の揺らぎに合わせ、オーディエンス達は目を瞑り、音に身体を任せている。そこに名曲「so blue its black」のイントロが鳴り、会場からは声が上がる。この曲に関してはトミーはペダル類を使わない。生のギターの音を最大限に生かし、お馴染みのフレーズを弾いていく。ゆったりと音が流れて行く。すると突然、トミーはギターをかき鳴らすように弾く。トミーのエモーショナルな心が、激しく動いたようだ。会場からはまた大きな声が上がった。会場の空気とトミーの音とが絡みつくように一つになっていくような気がした。

カリスマ・ミュージシャン、トミー・ゲレロのDJとしての側面

今回のツアーがスペシャルなことは、ステージの様子からすぐにわかるだろう。そして、ツアーをより特別なものにしているのが、ライヴの後に行われたトミーのDJプレイだ。

「このツアーは、本当に今までと違うことがやりたかった。友達を家に招いて、一緒に音を楽しむようなことをしたかった。だから、ライヴだけではなく、DJをして、みんなで盛り上がりたかったんだ。そこで思いついたのが、アルバム『The Endless Road』の曲をいくつか7インチとしてリリースして、リリース・パーティっぽくDJをするということさ。そのときにこの7インチをプレイしようと思いついたんだ。俺はDJをするときは、7インチしかプレイしない主義だからね。45歳になったときから、DJプレイをする時は、45回転のレコードだけをDJプレイしようと決めてたんだ。今回のツアーでは古いソウルやファンク、ジャズなど、いろんなジャンルの7インチと混ぜてプレイしようと思っているから、楽しみにしてほしい。今回のツアーは前半のライヴ、後半のDJプレイ通して、パーティのような雰囲気を楽しんでもらえるとうれしいね」

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実はトミーはセレクターとしても非凡な才能を持っている。ザ・シネマティック・オーケストラストアやジャミロクワイ、アークティック・モンキーズら世界的なミュージシャンにミックス・アルバムを制作する『レイト・ナイト・テイルズ』に招かれ、ミックス・アルバム『アナザー・レイト・ナイト』を作っているほどだ。Ramsey Lewis、Chambers Brothers、Bill Withers、Cymandeら、’70年代のソウルやファンクをセレクトし、高い評価を得ている。今回のツアーでも、古いソウルやファンクを選曲し、フロアの人たちを心も身体も心地よく揺らしていた。キラーチューンにレア・グルーヴ、約一時間のプレイはとても充実したもので、トミー自身も7インチをスピンさせながら、心から楽しそうにプレイしていた。オーディエンスを煽り、会場全体がひとつの音のかたまりになったようだった。そして初日の公演は、大きな歓声とともに幕を閉じた。

翌日は氷点下の天候の中、松本のMole Hallを暖かくし、そしてその次の静岡のBlue Note 1988では、激混みのフロアの中で、大きなグルーヴを生み出す。仙台のClub Shaftでは座りながら音を楽しむオーディエンスに温かな雰囲気を演出してもらい、名古屋のLive and Lounge Vioでは、ゲストDJに井上薫を招き、ゆったりとしたライヴを繰り広げた。大阪のCircusは立錐の余地のないほどのオーディエンスが駆けつけ、終始熱いバイブスが会場を埋め尽くす。そしていよいよ東京はホールでの開催となるduo MUSIC EXCHANGEでのライヴだ。広い会場の中にトミーが生み出す音が気持ちよさそうに漂っていく。前方の柵に身体を委ね、目を閉じて音を全身で受け止めようとするオーディエンスもいた。長い距離を南下し、到着した加古川の079 Buildでは、コンパクトな会場を大きなグルーヴが包み込んだ。ツアー・ファイナルとなる京都Metroはホームグランドとも言える場所で、トミーは何度もライヴを行なっている。ここでも人波が生まれ、フロア全体が揺らぐような音の大きな揺らぎが出来上がった。全国9ヶ所で開催されたツアーは、まさに駆け抜けたという感じの突貫っぷりだったが、どこの会場でも大きなグルーヴを生み出し、新たなライヴの方向性を作り上げたものだった。

Words by Masahiro Sugimoto / Interview by Hashim Bharoocha / Photos by Kazuhiko Tawara

TOUR INFORMATION

TOMMY GUERRERO “THE ENDLESS ROAD” JAPAN TOUR 2016 SOLO LIVE & DJ SET

Dates
  1. 12/09 – Niigata @ Gioia Mia
  2. 12/10 – Matsumoto @ Mole Hall
  3. 12/11 – Shizuoka – @ Blue Note 1988
  4. 12/12 – Sendai @ Club Shaft
  5. 12/13 – Nagoya @ Live and Lounge Vio
  6. 12/14 – Osaka @ Circus Osaka
  7. 12/16 – Tokyo @ duo MUSIC EXCHANGE
  8. 12/17 – Kakogawa @ 079 Build
  9. 12/18 – Kyoto @ Metro

More Info: Rush Production

RELEASE INFORMATION

Tommy Guerrero 『The Endless Road』

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  • DDCB-12540
  • 2,315Yen +Tax
  • Released by RUSH! X AWDR/LR2
Track List
  1. 01. el camino negro
  2. 02. highway hustle
  3. 03. los padres
  4. 04. blvd nights
  5. 05. headin west
  6. 06. silent miles
  7. 07. freewave
  8. 08. sidewalk soul
  9. 09. slow roll
  10. 10. a distant closeness
  11. 11. when clouds ignite
  12. 12. the endless road

More Info: Rush Production

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One thought on “大盛況に終わったトミー・ゲレロのジャパンツアーを振り返る[ライブレポート]
  1. Early より:

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