ロバート・グラスパー 読者参加型インタビュー Part 1

June 13,2016 | Category :  Interview News | Tag :  Miles Davis, Robert Glasper,

robertglasper-interview

A Q&A with Robert Glasper

ハイエイタス・カイヨーテの魅力、お気に入りのディラ・ビーツ、そしてバンドリーダーとしてのマイルス・デイヴィスなどについて、ロバート・グラスパーが語ってくれた。

ジャズ・ピアニスト、プロデューサー、そして作曲家のロバート・グラスパーは、今や最も話題に挙がるピアニストだろう。2012年にグラミー賞受賞作『Black Radio』をリリースして以来、自身がバンドリーダーを務めた作品や、演奏者/プロデューサーとしてクレジットされている作品を含めたら、毎年何かしらのリリースがある。そして頻繁に来日をしており、去年だけでもビルボードライブ、ブルーノートで単独公演を行い、TAICOCLUB、Blue Note Jazz Festivalなどフェスに出演し、西本智実率いるオーケストラとのコラボレーション・コンサートまで行った。(今年は7月にビルボードライブでの公演とFUJI ROCKの出演が決まっている)

グラスパーが『Black Radio』で打ち出した、ジャズとR&B/ヒップホップの溝を埋めたサウンドは今やムーヴメントと化しており、そのスピリットに呼応した作品を発表するアーティストは後を絶たない。今年もグラスパーは精力的であり、すでにドン・チードル監督/主演のマイルス・デイヴィス伝記映画『Miles Ahead』のサウンドトラックと、マイルス・デイヴィスのトリビュート・アルバム『Everything’s Beautiful』をリリースしている。今年もロバート・グラスパーの話題が尽きることはないだろう。

『Everything’s Beautiful』はただのカバー・アルバムではなく、マイルス・デイヴィスの楽曲や声ネタをサンプリングした曲や、マイルスの音楽にヒントを得て制作したオリジナル曲など、自由な発想でマイルスへのオマージュを行っており、新しいトリビュート・アルバムの可能性を提示している。作品の名義はマイルス・デイヴィス&ロバート・グラスパーだが、グラスパーはビラルエリカ・バドゥスティービー・ワンダーハイエイタス・カイヨーテキングローラ・マヴーラフォンテなど、自身が信頼するマイルス・ファンのミュージシャンたちと共同で楽曲を制作しており、曲によっては一歩下がってそのアーティストの個性を尊重している。ロバート・グラスパーがキュレーターとなった共同制作アルバムであり、結果的に『Black Radio』シリーズよりも多彩な内容に仕上がっていると言える。

さて今回、ロバート・グラスパーにインタビューをするにあたって、Wax Poetics Japan初となる読者参加型インタビューを敢行した。TwitterやFacebookでロバート・グラスパーに聞きたい質問を募集し、集まった質問を編集部で選定し、後日行われた電話インタビューで本人に投げかけてみた。もちろん新作についても聞いたが、今回はなかなか普段聞く機会がない質問にも答えてもらうことができ、とても有意義なインタビューとなった。(質問を送っていただいた方々、ありがとうございました)

“(マイルスは)ただ「こう演奏しろ」って命令するんじゃなくて、ミュージシャンたちに自由に演奏させて、求めている演奏が自然に生まれるように意思疎通していたんだ ”

ー まずは読者の質問から始めたいと思います。ayumi osx さんからの質問です。「最近良く聴くプレイリストを教えてください」

ロバート・グラスパー (以下ロバート): ここ最近は今手がけているプロジェクトのミックス作業をずっとやってて、全然新作がチェックできていないんだ。アンダーソン・パックは凄く聴いてる。あとは…ちょっと前に出たドクター・ドレのアルバムとか、ケンドリック・ラマーとかかな。

ー さっそく次作にとりかかっているのですね?

ロバート: 他のアーティストのアルバムをプロデュースしているんだ。ここ数ヶ月はコモンと一緒によくスタジオに入っていた。それと、ハービー(・ハンコック)のアルバムを今プロデュースさせてもらっているんだ。

ー それは…とても楽しみです!‏根間崇司 さんからの質問です。「日本の好きなアーティストはいますか?」

ロバート: 日本のアーティストは全然知らないんだよな…Hiromi (上原ひろみ) は好きだよ。

Yoko Meguro さんからの質問です。「これまで音楽をやっていて、1番興奮した/忘れられない瞬間は?」

ロバート: 今やってるハービーとの制作は、本当に忘れられない経験になりそうだよ。これまでのキャリアのなかで一番光栄な仕事なんだ。なにしろ、ハービーの家に毎日出向いて、彼と色々な話をしたり、間近で演奏を見たりしているんだ。俺が作った曲の上で彼が演奏しているんだぜ?ピアニストとして、これほど光栄なことはなかなかないよ。

ー マイルス・デイヴィスの音源を元に制作するというのもジャズ・ミュージシャンとして相当な名誉ですよね。『Everything’s Beautiful』の話が来たとき、どう思いました?

ロバート: いやぁ、信じられないことだったよ。マイルスの音楽を俺が自由にいじって良いなんてね。むしろ、あまりの大役で最初はどうしていいかわからなかったのが本音だ。責任感に押し潰されないように気をつけないといけなかった。膨大な量の音源を渡されたんだ。あれだけの量の素材があったら、5枚はアルバムを作ることができたと思うよ。

ー プレッシャーを感じていたのですね。今作の収録曲は全てロバートがプロデュースしたわけではなく、9thワンダー、ジョージア・アン・マルドロウ、ハイエイタス・カイヨーテ、DJスピナなど、参加アーティストにプロデュースを任せている曲もあります。それはもしかして、そうすることでプレッシャーをロバートひとりで背負い込む必要をなくすためだったのですか?

ロバート: それも半分あったかもしれないね(笑)。今回、もとからマイルス・デイヴィスの大ファンだった人だけを選んだんだ。マイルスにこれまでどう影響を受けてきたのか、彼らなりに表現して欲しかった。だから俺が「こういう感じの曲にしてくれ」とかあまり指示しなかったんだ。皆それぞれ個性があるし、俺は彼らをリスペクトしている。だからそのまま形にしたかったんだ。それに、彼らがある程度曲の方向性を決めてくれると、迷うことも少なくてやりやすいんだ。なにしろあまりに膨大な音源がありすぎて、なんでもできる状態だったからね。

ー ハイエイタス・カイヨーテはここ最近、日本でも非常に人気です。彼らのどういう所に惹かれますか?

ロバート: 彼らの音楽はとても素直だと思うんだ。そしてジャンルに対して流動的だ。R&B、ヒップホップ、ジャズの間を自由に行き来することができている。しかも、それを上手くやっている。メンバーにひとりも黒人がいないし、パッと見ると彼らがそういうバンドには見えないからこそ、彼らの音楽に様々な人たちが魅せられているんだと思う。彼らが黒人アーティストに影響を受けていることは聴けばわかるが、彼らの表現はとても素直で、頑張ってそういうサウンドをやろうとしている感じが全くしないんだ。

ー このアルバムを最初に聴いたときに個人的に驚いたのは、DJスピナがプロデュースした「Right On Brotha」がハウスだったことです。ロバートはダンス・ミュージックとどう向き合っているのですか?

ロバート: 特に俺のなかではこれまで意識してこなかった音楽なんだ。でもビッグなシーンだということはわかっていた。親しい友人であるDJスピナはハウス・キングのひとりだ。「ハウスをやってみたいんだけど、どう?」って彼から提案されて、これまで俺がやってこなかったジャンルだから面白いなって思ったんだ。それを機に、最近ようやくちゃんとハウスを聴くようになったよ。

ー 今作ではマイルス・デイヴィスの80年代のアルバム(『Star People』、『Decoy』、『You’re Under Arrest』)に実際に参加していたギタリスト、ジョン・スコフィールドが演奏しているのも面白かったです。

ロバート: ジョンとはもう何年も前から知り合いなんだ。一緒に制作をしようと前々から言っていたんだが、中々機会がなくて、今回ようやく一緒にできたんだ。実際にマイルスと演奏していたミュージシャンに参加してもらうことができて本当に嬉かったよ。過去とのリンクなんだ。

ー これまで長年マイルス・デイヴィスの音楽を勉強してきたあなたですが、今回彼が残した録音をじっくり聴き返すことで、どういった発見がありましたか?

ロバート: 今回マルチトラック音源をもらって、なかなか一般の人だと聴くことができない貴重なものを沢山聴かせてもらった。レコーディング・セッションの様子とか、彼が他のミュージシャンにどういう口調で喋っていたとか。彼は何か説明をするときによく音楽と関係ない比喩表現を使うんだ。マイルスが自分の考えをどうやって人に伝えていたのかを聴くことができて、とても興味深かったよ。どうやってミュージシャンたちに指示すれば、自分の意図していることを汲みとってくれるか、彼は熟知していた。ただ「こう演奏しろ」って命令するんじゃなくて、ミュージシャンたちに自由に演奏させて、求めている演奏が自然に生まれるように意思疎通していたんだ。

Part 2に続く: 「俺はジャズに新しい波を起こしているつもりだ」

RELEASE INFORMATION

Miles Davis & Robert Glasper
『Everything’s Beautiful』

everything
  • 価格 (税込): ¥2,376
  • レーベル: Sony Music Japan
  • 発売中
内容
生誕90年であり、没25年を迎えたマイルス・デイヴィスに捧げるトリビュート・アルバムとして、ロバート・グラスパーが様々なコラボレーターと共にマイルスの音世界を再創造。米コロンビア・レーベルのテープ保管庫にて選ばれたマイルスのオリジナル録音をベースに作曲やリミックスをし、マイルスの音楽の遺伝子が今も受け継がれていることを証明する。ビラル、イラ・J、エリカ・バドゥ、フォンテ、ハイエイタス・カイヨーテ、ローラ・マヴーラ、キング、ジョージア・アン・マルドロウ、スティーヴィー・ワンダー、そして実際にマイルスのバンドでも演奏していたギタリスト、ジョン・スコフィールドが名を連ねる。プロデューサー陣にはDJスピナやブラック・ミルクも参加。
トラックリスト
  1. 1. “Talking Shit”
  2. 2. “Ghetto Walkin” featuring Bilal
  3. 3. “They Can’t Hold Me Down” featuring Illa J
  4. 4. “Maiysha (So Long)” featuring Erykah Badu
  5. 5. “Violets” featuring Phonte
  6. 6. “Little Church” featuring Hiatus Kaiyote
  7. 7. “Silence Is The Way” featuring Laura Mvula
  8. 8. “Song For Selim” featuring KING
  9. 9. “Milestones” featuring Georgia Ann Muldrow
  10. 10. “I’m Leaving You” featuring John Scofield and Ledisi
  11. 11. “Right On Brotha” featuring Stevie Wonder

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