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Wax Poetics Japan
William Hooker vs. DJ Olive
By: Brian DiGenti この記事は当初1997年9月に公開された
音楽の歴史を振り返り、過去に出版された記事を掘り返していくワックス・ポエティックス。
1990年代中盤から後半にかけてあった一連のストーリーを紹介する。
ターンテーブリストであるDJオリーブは、ニューヨークのThe Coolerでのジャム・セッションでドラマーで作曲家、そして詩人でもあるウィリアム・フッカーと出会った。オリーブは子供の頃、聴いて育ったミュージシャン達と同じステージでセッションする事にどれだけ緊張したかを思い返す。
それはマイク・ワット(ミニットメンとファイアホース)、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとリー・ラナルド達だ。「しばらくすると、彼らは皆俺の事を無視しているように感じた」とオリーブは言う。「ただウィリアムだけは違った。俺は彼のことだけは、まだその時聴いた事がなかったんだ。ウィリアムは俺の所へやって来て、こう言った。『お前を聴いてたよ。向こうにいた時からお前の事を聴いていたんだ』ってね」 それから2人は断続的に仕事を一緒にするようになり、各箇所で異なったソロ・アーティストを招いての全国ツアーを始めた。『Mindfulness』(Knitting Factory Works)はサンフランシスコのスリムスで録音され、サックス奏者のグレン・スペアマンが参加している。
フッカーのフリー・ジャズの美学の中で演奏する事は、クラブDJ、そしてジャングルのスタジオ・プロデューサーであるオリーブにとっては、新たな領域だった。「音楽の能力とエレクトロニック・ミュージックの関係性、そしてスタジオで作業することについての幅広い理解を得た」とオリーブは言っている。「互いに音楽的には、ほぼ対極なので、はじめのうちはそれが俺にとっては衝突の原因だった」 フッカーはオリーブにジャズの歴史と様々なディープな音楽理論(例えば電子楽器がどうドラム・キットの音の核を壊すのかなど)を教え込むだけでなく、尊敬と共にオリーブを後押しした。「俺のことを真剣に思わない多くのミュージシャン達と共演してきた」とオリーブは言う。「『おい、これは使えるぞ。もっと盛り上げるにはどうするんだ?』と言ったのはウィリアムが初めてだったんだ」
ターンテーブリズムはヒップホップから生まれ、他のどんな方法でも、なし得ない音を作り出すスキルとテクニックがあった。オリーブはその理念をさらに次の段階へと推し進めたのだ。「カットやスクラッチといったヒップホップの基本的なテクニックがほんとに好きなんだ」と彼は言う。「その表現方法を更に磨こうとは思わない。違う独自のやり方を生み出そうとしているんだ。俺は60年代や70年代の初期のエレクトロニック・ミュージックのレコードを捜す。単独の音を使って、レコード針を通じてその音に働きかけ、エフェクトを使う。だからある一方では、フリー・ジャズのホーン奏者がやるようなやり方でターンテーブルを扱うことができるんだ。『Sounds of the Hump-Back Whale』のようなありきたりなアンビエントのレコードを使ってでも、そのレコードから特定のクジラの音を探し出して、それをもっとシンセサイザーのような音に操作する事が出来る」 事実、『Mindfulness』の10分に及ぶ2人の作品「How」では、オリーブはザトウ・クジラのエコーする鳴き声の非現実的な雰囲気を、異様な鳴き声の曲に昇華させた。
フッカーにとって、フリー・ジャズのセッティングの中で、ターンテーブルを使うことは新しくはなかった。「初めてニューヨークへ来たときに同じことをThe Kitchenでやった。その頃ターンテーブルは、エクスペリメンタル・シーンの中で本当に1つのパートにすぎなかったんだ」と彼は思い返す。「ヒップホップ全体の現象とも、イルビエントやそういったものとも何の関わりもない。俺の音楽全体に対して彼が作り出すもののが気に入ったから、彼を選んだんだ。俺はターンテーブルに関してや、ターンテーブルを扱う奴らのことは知らないよ」
DJ達は長い間ジャズ・プレイヤー達と共演してきたが(例えば、コートニー・パイン、ブランフォード・マーシャルズ他)フッカーのセッティングでは、ターンテーブルはビートの上に音を乗せたり、リズムにサンプルを加えたりすることはほとんどない。代わりにオリーブがやる事は、作曲全体の重要な一部分であり、フッカーに直接的な影響を与える。「普通の人が聴くようにオリーブのプレイを俺は聴いていないんだ」とフッカーは言う。「俺が演奏している間は、それは全く意味を成さない。リスナーとして彼がかけるものには全く注目していない。俺は自分自身の肉体をある特定のポイントへ動かすことに集中しなければならない。聴いて、その音が自分自身、自分の肉体、精神をインプロビゼーションができる所まで運んでくれるのを望んでいるんだ。より多くの質感を得る事ができれば、より音楽的な方向へ向かえ、他の音色や音質も扱える」
ツアー中にはその関係性は一晩ごとにどう変わっていくのだろう?「それは大変な事だよ」とオリーブは言う。「彼は俺が餌を与えなければならない動物のようだ。色、質感、景観を与え、彼はそれらを通して動きながら、むさぼり食っていく。ある特定のポイントでは、その質感を食べ、それで俺は彼に餌を与え続けられなくなってしまう。とても獰猛だから、彼に着いて行くのはとても大変だ」
レコーディングでは、フッカーとオリーブは交互にやりあい、より強力なものを作り上げていく。夢の様な「Archetypal Space」では、オリーブはウゼット・プラウシュの「For the Falling Dream」の大部分を、フッカーによるシンバルに導かれた旅の背景として選び出した。それから、オリーブは2番目のターンテーブルを使い、歪んだ音のするエレクトロニカの断片を操り、フッカーのタムの集中砲火を呼び起こす。「Living Organ—Parallel Planes」では、オリーブはスピアマンのホーンと意識的に争っているようで、彼をけしかけ、最後には自らが引っ込みスピアマンのソロを解放させる。
フッカーとオリーブは2人共、『Mindfulness』の制作行程の背景はフリー・インプロビゼーションとは全く異なったものだと言っている。本作では、構造がしっかりありながら、より優れたコントラストが含まれていると強調している。しかし、ギグの前のオリーブに対するフッカーのちょっとしたインスピレーションを聞くのは、彼らの精神の類似点を見るようなものだ。
「アイデアとしてはエーテル(天空)への1つの橋を作ることなんだ」とフッカーはオリーブに言った。「そして、俺達はそれぞれ自分の橋を作らないといけない。どうやって作るかは教えられないが、俺はそこへ行って自分の橋を作りだす。もし自分自身の橋を作る事ができれば、俺とお前はそこで出会うんだ」






