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Blasphemy

Artist : Apollo Brown & Ras Kass  | Label : Mello Music Group  | Release Date : 2014/10/29

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デトロイト拠点のプロデューサー、アポロ・ブラウンの多作ぶりには驚かされる。ここ4年ほどで、D.I.T.C.のOCやギルティ・シンプソンなど1人のMCとタッグを組んだ形式のコラボアルバムや、インスト・アルバムなどの作品を10枚以上リリースしており、比較的新しいアーティストながらすでにベテランのようなリスペクトの集め方をしている(去年のゴーストフェイス・キラーの『12 Reasons to Die』には、エイドリアン・ヤングが手がけたオリジナルに加え、アポロ・ブラウンのリミックス・アルバムまで発売した)。いっぽう、今回のアルバムでタッグを組んだ西海岸のMC、ラス・カスは正真正銘のベテランであり、90年代から西海岸のアンダーグラウンドをリードしてきた重要人物。完成したアルバムは、今年のアンダーグラウンド・ヒップホップを代表する1枚となった。
 
コンシャスなリリックも、鋭いパンチラインも得意とするスキルフルなMCとして定評のあるラス・カスだが、「冒涜」を意味する『Blasphemy』と名付けられたこのアルバムには、不完全な人間ゆえに犯してしまう冒涜や過ちを多角的に分析した楽曲が目立つ。「How To Kill God」ではあらゆる宗教や哲学の矛盾を一刀両断し、「Please Don’t Let Me」では自身の過去の不道徳を告白し、「Humble PI」では謙虚な心を失うことの危険性を指摘し、「Strawberry」では人種差別の無意味さを訴えている。客演も強力であり、「H20」では、ファラオ・モンチとダイレーテッド・ピープルズのラカが参加し、「Giraffe Pussy」にはロイス・ダ・ファイブ・ナイン、イグジビットとビショップ・ラモントというデトロイト/ウエスト・コーストの重鎮たちが揃っており、ハードなマイクリレーを見せている。
 
そして音楽面はというと、全編アポロ・ブラウンらしい作風になっている。ソウルのレコードからダイナミックなホーンやスリリングなストリングスを抜き、素材の良さを活かしてループさせ、90sブームバップなドラムスを加えた、ざらついた質感のアポロ・ブラウンのトラックは、聞けばすぐに彼だと解るほど特徴的である。個性的なスタイルを確立させることを他ジャンルよりも重要視するヒップホップにおいてこれは強力な武器だが、同時に、比較的どのビートも似た趣向のものになってしまうことも事実である。そして曲の中に大幅な展開は用意されていないトラックが多いことから、単調に聞こえてしまう場合もあるが、再生したときの最初のインパクトの強さは絶大であり、世界観にいったん引き込まれてしまえば、その反復感は中毒性を発揮する。社会風刺からバトルライムまでを、ユーモアも交えながら、長年培ってきたスキルと貫禄でリスナーに届けるラス・カスのラップと、アポロ・ブラウンのオーガニックかつ、ときにドラマチックな、ときに叙情的な物語性のあるトラックは相性が良く、『Blasphemy』は時代の潮流とは一線を画した良質アングラ・ラップアルバムに仕上がっている。

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