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Goddess

Artist : Banks  | Label : Harvest  | Release Date : 2014/9/5

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近年注目のオルタナティヴR&B(もしくはPBR&Bなどとも)。曖昧なネーミングだが、従来のソウル・ミュージックの流れに身を置きつつ、オルタナティヴ・ロックからエレクトロニカ、チルウェイヴ、ポスト・ダブステップなどにもリンクする新世代のR&Bというのがざっとした解釈だ。だから黒人アーティストだけでなく、白人や他の人種でやっている人も多い。若い女性シンガーも続々と生まれ、バンクスことジリアン・バンクスもメディア的にそこへ位置づけられるが、しかしその枠に収まらないスケールの大きさがある。カリフォルニア出身の彼女は現在26才で、2013年頭に初シングル「Fall Over」をリリース。続く「Warm Water」やEP『London』が注目を集め、BBCやMTVのアワードにもノミネートされ、一躍話題のアーティストへ。数々のフェスにも招聘されて脚光を浴び、デビューからわずか一年余りでこのファースト・アルバムを発表した。
 
彼女は全ての作曲に携わり、共同プロデュースにSOHN(ソン)、トータリー・イノーマウス、エクスティンクト・ダイナソーズ、リル・シルヴァ、ジェイミー・ウーン、Shlohmo (シュローモー)らが名を連ねる。いずれもバンクスと同世代の若いビート・クリエイターで、LAのシュローモーを除きロンドンを拠点とするが(現在ソンはロンドンからウィーンへ移住)、全体的にダウナーでヘヴィ、ダークで影のある楽曲が多いのは、こうした英国勢の影響によるところか。LAのRhye (ライ)やInc. (インク)、もしくはシカゴを拠点とするハウ・トゥ・ドレス・ウェルなどUSには素晴らしいオルタナティヴR&B系アーティストがいるが、バンクスのアルバムにそれらにない味わいを感じるのは、そうした英国からの風かもしれない。ベース・ミュージック、フットワーク、ポスト・ダブステップ的な要素を持つ曲もあり、ジェイムズ・ブレイクからブリアル、ずっと遡ればポーティスヘッドやマッシヴ・アタックなどブリストル・サウンドやトリップホップの源流を見出すことも可能だ。エリー・ゴールディング、ジェシー・ウェア、アルーナ・フランシス(アルーナジョージ)、グライムスことクレア・バウチャー、チャーリーXCXといったポップ・アイコン的存在とは異なるアンダーグランドな神秘性があり、比較となる同世代の女性シンガーでは、同時期にデビュー・アルバムを発表したFKAツイッグス、ハイパーダブのジェシー・ランザ、ブレインフィーダーのライアット、ジ・インターネットのシド・ザ・キッド、ボク・ボクとの共演で脚光を集めるケレラあたりが思い浮かぶが、こうした若手の中では圧倒的な歌唱力と幅広い表現力を持つ。
 
可憐なソウル・フィーリングを湛えた「Alibi」、気怠くもサラリと歌う表題曲、魔女風で退廃的な「Waiting Game」、淡々とした中から骨太なロック感覚が浮かび上がる「Brain」、中性的でクールな「This Is What It Feels Like」、時にゴシックR&Bと評されることを伺わせる「Stick」、透明で浮遊感に満ちた「Fuck Em Only We Knew」、アーシーな魅力の「Drowning」、コケティッシュながらダイナミズムも感じさせる「Beggin For Thread」、シンプルだが奥行きのある「Change」、アコースティックでフォーキーな「Someone New」、アンビエントで抑えた質感の中に忍ばせた情感が素晴らしい「Warm Water」、スウィートなスロー・バラードの「Under The Table」、エレクトリック・サウンドと結び付いてポップかつエキセントリックな色彩の「Fall Over」、ダークでヘヴィなサウンドに対抗する力強さを持つ「Before I Ever Met You」、繊細でミステリアスな「Bedroom Wall」と様々な表情を持ちつつ、その全てにバンクスの存在感があるアルバムとなっている。ピアノとストリングスをバックに切々と、しかしダイナミックに歌い上げる「You Should Know Where I’m Coming From」を聴けば、バンクスがオルタナティヴR&Bという一時のムーヴメントを越え、将来的にはアデル、ファイスト、フィオナ・アップル、ラナ・デル・レイ、フローレンス・ウェルチ、セイント・ヴィンセントなどの個性に匹敵する存在になるのではと期待を抱かせる。

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