IAR026CD

That Grit

Artist : Kev Brown & Hassaan Mackey  | Label : Ill Adrenaline  | Release Date : 2014/11/12

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英語には「less is more」という言葉がある。元々は建築界の巨匠が提唱した概念らしいが、「必要最小限こそが、最大の効果を生む」といった意味の、ミニマリズムを象徴する言葉である。つまりシンプル・イズ・ベスト。ワシントンDCに隣接するメリーランド州をレペゼンするプロデューサー/MCのケヴ・ブラウンが制作するトラックには、そういった“引き算の美学”が感じられる。2小節のループ、暖かいキックに鋭いスネアとハット、そして出しゃばりすぎず、丁度良いタイミングで鳴る太いベース。無駄な装飾を一切省いた最低限の音数で、何度も再生したくなる中毒性の高いグルーヴを生み出す職人気質のビートメイカーである。
 
ジャジー・ジェフの作品への参加や、日本ではJazzy Sport周辺アーティストなどとのリンクを通し、アンダーグラウンドで信頼を集めてきたケヴ・ブラウンだが、彼が全曲プロデュースした新作『That Grit』は、彼率いるローバジェット・クルーの一員である、ニューヨークはロチェスター在住のMC、ハサーン・マッキーとのコラボ。イントロを含めて収録曲は9曲であり、残りはインストというミニマルな内容も、過剰を好まないケヴらしい構成。ハサーン・マッキーはフリースタイル/バトル・シーン上がりのMCであり、どこかヤシーン・ベイを彷彿させる声質で淡々とラップする彼のスタイルは、雑味に溢れた粗い質感が魅力のケヴ・ビーツに溶け込むように相性が良い。ケヴ・ブラウン本人もラップを披露している他、アシェル、グラップ・ラヴァ、ワイユー、ケン・スターなど、東海岸、ワシントンDCエリアの盟友達の参加もあり、ケヴのスタジオに集まり、皆でフリースタイル・セッションしたものをそのままパッケージしたような空気感が伝わる。
 
そういった、洗練され過ぎていない、ラフなセッション感が同作の最大の魅力かもしれない。『That Grit』とだけ銘打たれたタイトル(Gritは塵、埃という意味)や、睨みつけるハサーンの顔を乗せただけのシンプルなジャケット・デザインから察するに、このアルバムは明確なコンセプトや大義名分の元に制作されたというよりは、ただ単純に、埃まみれでラフなビートに、生々しくタフなライムを乗せ、ひたすら聴く者の頭を揺らす、そんな目的のもとに出来上がった作品なのだろう。そのシンプルな目的は見事に達成している。それにしても「Yatti」ほど簡素で、かつ鳥肌が立つぐらい格好良いビートを聞いたのは、久しぶりだ。

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