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Tuxedo

Artist : Tuxedo  | Label : Stones Throw  | Release Date : 2015/3/3

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ブリブリなシンセとラウドに響くクラップのミディアム・ダンサー「So Good」と、ピアノとクラップとヴォーカルのみのイントロから爽快なダンス・ナンバー「Do It」、そしてパーティーの終盤に合いそうなスロウ・ジャム「Get U Home」の3曲をまとめたEPを、タキシードという謎のユニットが突如ネットに放ったのは今から2年前のこと。そのたまらなくキャッチーなメロディー感と、暖かいシンセ・サウンドにすぐにヤラれ、フルアルバムが聴きたい!とそのとき切望したのを覚えている。

これがメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンのユニットだと知ったときは、驚かずにはいられなかった。何しろ、それまでメイヤー・ホーソーンと言えば、Stones Throwからのデビューアルバム『A Strange Arrangement』と、Universalからの2nd『How Do You Do』で確立したレトロ・ソウルのイメージしかなく、ジェイク・ワンと言えばアンダーグラウンドからメジャーのラッパーまで手広く手がけるも、基本的にはサンプリング主体のヒップホップ・プロデューサーという印象しか持っていなかった。ふたりがこんなにも軽快で色鮮やかなブギーを作るとは、衝撃だった。その後、メイヤー・ホーソーンはファレルらをプロデューサー陣に迎え、ヴィンテージなサウンドと現代の感覚を見事に調和した3rdアルバム『Where Does This Door Go』や、同胞14KTとタッグを組み、ニューウェイヴ/シンセ・ポップをダークでミステリアスにアップデートした『The Big Knock』を発表しているので、引き出しの多いアーティストであることはもはや明確だが。

2013年にダフト・パンクがファレルとナイル・ロジャースと共に「Get Lucky」で疾風を巻き起こした辺りから、ポップ・ミュージック界でディスコ/ブギー/ファンク調の曲がヒットする流れができており、ファレルとロビン・シックの「Blurred Lines」や、ジャスティン・ティンバーレイクの「Take Back The Night」、マーク・ロンソンとブルーノ・マーズの「Uptown Funk」もその文脈に含まれる。このアルバムは、そういったリバイバルへの彼らなりの返答…というわけではどうやらなく、各インタビューで話している所によると、実際にはふたりが出会った2000年代半ばごろからこういった作品を作る話があったらしい。世間の潮流を無視し、お互いのソロ活動の合間にコツコツと、ずっとやりたかった音楽を作り続けた結果、ようやく完成した頃には、たまたま世の中がこのサウンドに夢中になっていた…のだとしたら、完全に運を味方につけている。

このアルバムは、70年代が終わりディスコの勢いが衰え、シンセサイザーが大々的に使用されるようになった頃から、ドラム音まで電子的になってしまう前の、1980年から83年ぐらいまでのブギー・ファンクを彼らなりに甦らせたもの。ウィスパーズ、バーナード・ライト、シャラマー、ギャップ・バンド、ザップといったアーティストの影響は色濃く、ジャケットはワン・ウェイの『Fancy Dancer』(1981年)へのオマージュだと捉えて間違いなさそう。制作においてジェイク・ワンはサンプリングを封印しており、ドラムは打ち込みのようだが、シンセ、ベース、ギターなどは彼とメイヤー・ホーソーンが演奏し、キーボードやストリングスなどで外部ミュージシャンも起用。この時代の光沢のあるシンセ・ファンクをとことん追究しているが、大きめにミックスされたドラムなど、音の響きは現代的なセンスで磨き上げられている。(ミックスを行ったのは伝説のディスコ・リミキサー、ジョン・モラレス)

アルバムは優雅なストリングスが映える「Lost Lover」のミディアム・グルーヴで幕開け、キャッチーな「トゥットゥール~」が耳から離れない「R U Ready」と続く。この時点でまだノリノリじゃなくても、「Watch The Dance」のイントロにてドラムビートとカッティング・ギターが入ってくるころには、身体が勝手に踊り出していることだろう。デイム・ファンクがショルダー・シンセの華麗なソロを披露するメロウ・バラード「Two Wrongs」や、アルバム唯一のインスト・グルーヴ「Tuxedo Groove」といった曲で一旦テンポダウンした後、「I Got U」、「The Right Time」、「Roll Along」とアップテンポでファンキーな楽曲が続き、やはりステップを踏まずには聴いていられない。US盤のラストとなる「Number One」(国内盤にはボーナストラック1曲収録)は、スヌープ・ドッグの「Ain’t No Fun (If the Homies Can’t Have None)」の元ネタという体で制作したらしく、メイヤーが敬愛してやまないネイト・ドッグの歌パートを元に書き起こしたもの。ヒップホップを通過している彼ららしい遊び心が良く表れた曲だ。

曲の内容としては、踊ることや女性を誘惑することを題材にしたパーティーソングが主だが、プリンスやリック・ジェームズのような全開のセクシュアリティではなく、『Off The Wall』時代のマイケル・ジャクソンばりに、キラキラのスーツに身を包んでスタイリッシュに女性にアプローチするような、品のあるセックスアピールを醸している。じっとして聴くのが難しい、優れたダンス・ミュージック・アルバムであるのは間違いないが、ファルセットとミッドレンジを使いこなすメイヤーの歌声を堪能するR&B作品としても秀逸。きっと彼らも楽しみながら制作したのだろうと容易に想像できる、音楽愛と悦びに満ち溢れた作品であり、聴くたびに笑顔にさせられる。

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