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XII

Artist : Brandon Williams  | Label : SWEET SOUL RECORDS  | Release Date : 2015/3/4

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ロバート・グラスパー・エクスペリメント(RGE)の『Black Radio』シリーズをさらにR&B寄りにして、カール・クレイグ主導の『The Detroit Experiment』をジャズ~フュージョン解釈したような一枚。マイケル・J・パウエルの弟子で故J・ディラとも交流があったデトロイトのドラマー/プロデューサー、ブランドン・ウィリアムズの初リーダー作を端的に喩えるとそんな感じになるだろうか。実際に本作には、ロバート・グラスパーをはじめ、RGEのケイシー・ベンジャミンやデリック・ホッジが参加。デトロイトを代表する新旧の腕利きミュージシャン(デニス・コフィ、ロン・オーティス、アンプ・フィドラー、カリーム・リギンズ、ピラーナヘッド、UR一派のタイムラインなど)も演奏/アレンジで腕をふるっている。ネオ・ソウルを中心としたR&Bシンガーをゲストに呼び、デトロイトを舞台に、ソウル、ジャズ、ヒップホップ、ゴスペルを繋いで繰り広げた壮大な音楽絵巻はクインシー・ジョーンズの『Back On The Block』に勝るとも劣らない……とは大袈裟か。いや、それほどの大作である。本国では2014年11月に自主リリースされたものだが、この度、ボーナス・トラックを含む日本盤が発売されたので紹介する次第。
 
ポインター・シスターズによるオリジナルの女声パートをデトロイトの三人娘デイムス・ブラウンが歌い、ニコラス・ペイトンがホーンを添えた「セサミストリート」のアニメ・ソング・カヴァー“Pinball Number Count”から気分が高まる。元ジャネイのジーン・ベイラーが歌う第一弾シングル“Stronger”は師匠のマイケル・J・パウエルが手掛けたアニタ・ベイカーやレジーナ・ベルを思わせるクワイエット・ストーム系バラードだったが、アルバムは、ブラック・ミルクの制作でファロア・モンチらが客演したヒップホップ曲“Intimidation (So Fine)”から、ナディア・ワシントンの歌とニコラス・ペイトンのフリューゲルホルンによるイヴァン・リンス名曲“Velas Icadas”のカヴァー(クインシー・ジョーンズfeat.トゥーツ・シールマンスのリメイク版へのオマージュだろう)まで実に多彩。とりわけ、グラスパーのフェンダー・ローズとジェシー・ボイキンズIII世のロマンティック・ヴォイスがメロウな音空間を醸成するスロウ“Now I Know”、ケイシー・ベンジャミンのヴォコーダーを挿みデトロイトのアネーシャが歌うスロウ・ジャム“I Love You” は完全にRGE『Black Radio』の様式を意識したものだろう。
 
他にも、フランク・マッコムがマイルドに歌うスティーヴィ・ワンダー風ミディアム“Feel Free”、アーニー・アイズレーの娘アレックスのハスキーな美声で聴かせる優雅なスロウ“Leave Love Be”、アンプ・フィドラーとの共作でワシントンDCの歌姫デボラ・ボンドが情熱的に歌い上げるミッド・グルーヴの“Make Believe”など、登場する曲がことごとく傑作なのだから冷静ではいられない。バーナード・ライトらとともに故グレッグ・ドークス(デトロイトの名鍵盤奏者)に捧げたジャジーなインスト“Heaven”、生前のドン・ブラックマンによるピアノをフィーチャーした“Spend My Life”、そしてアルバム(オリジナル本編)の最後で披露される故ウェルドン・アーヴァイン“Yasmin”のカヴァーはジャズ~フュージョンの偉人/故人へのトリビュート。そんな裏テーマも含めて己のルーツを示した本作は、昨今のUSブラック・ミュージックにおけるミュージシャンシップの復権を象徴するような記念碑的な名盤だと断言したい。

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