jacket_img_L

You’re Dead!

Artist : Flying Lotus  | Label : Warp / Beat  | Release Date : 2014/10/7

Purchase

iTunes
Tower
HMV

フライング・ロータスは決して一ヶ所に落ち着くことはなく、変貌を遂げることを止めないアーティストであり、彼のアルバムはその時彼がたまたま見せている一瞬の“姿”でしかないように思う。2006年の『1983』で最初に世に提示され、2008年の『Los Angeles』で確立された、ローファイな質感と、ビンテージでありながら近未来的な世界観、ズレたヒップホップ・ビートなど、フライング・ロータスらしい(とその時思われた)サウンドは、その後ジャズに大幅に歩み寄った、様々なリズム感やストリングスなどを大胆に取り入れた壮大な2010年作『Cosmogramma』の登場で、見事に覆された。そして2012年には逆に音数を抑え、メロディーに強調が置かれた、全体的に穏やかなアルバム『Until the Quiet Comes』を発表し、また新しい一面を見せた。その合間には『Reset』、『Shhh!』、『Pattern+Grid World』といったEPもリリースしており、アルバムとはまた違う取り組みをしている。では、彼の作品群は無秩序で一貫性が無いのかと言うと、それもまた違うのが彼の凄い所だろう。どんなテンポやムードのトラックでも、音のチョイスや処理の仕方、質感で彼の曲だと解る。“フライング・ロータスらしいサウンド”とは、言葉で容易に説明できるものではなく、ひとつのスタイルやジャンルで表すことができるものではないが、彼の作品には確実に共通する何かがある。
 
『You’re Dead』は方々で語られている通り、よりジャズへ傾倒した作品であり、盟友のベーシスト、サンダーキャットが存在感を放っているだけでなく、ハービー・ハンコックがキーボードで参加しており、4名のドラマーや、サックス奏者のカマシ・ワシントンなどが多くの曲に参加している。本人がツイッターで行った解説によると、「サンダーキャット無しではこのアルバムは実現しなかった」ほど、サンダーキャットは同作の制作プロセスに置いて重要な存在になっていたようだ。 高速ドラミングのドリーミー・ジャズな「Theme」、「Tesla」、「Eyes Above」、「Moment of Hesitation」や、ジャズロック〜フュージョンな「Cold Dead」、「Turkey Dog Coma」など、ドラマーの卓越したプレイに支えられている楽曲もありながら、「Coronus, The Terminator」、「Siren Song」、「Turtles」、「Obligatory Cadence」といったサンプリング/打ち込みのスロービート・トラックもあり、生演奏と打ち込み/サンプリングがバランス良く共存している。やはり「死」をテーマに掲げているためか、この世を去り、冥土へと旅立っている気分にさせられる、夢幻的で浮遊感溢れる瞬間が全体的に多いが、フライング・ロータスのアルバムをそういった概括的な視点で語ってしまってはいけないだろう。スヌープ・ドッグが参加したバウンシーなヒップホップ、「Dead Man’s Tetris」や、ケンドリック・ラマーが参加した「Never Catch Me」など二転三転する展開が待ち構え、ひとつのサウンドに落ち着こうとしない奥行きのある楽曲もしっかり用意されている。今作は1分半程度の短い楽曲が多く、全体を通して1つの長い曲として聴くことが最適のリスニング方法だろう。
 
アルバムを出すたびにファン層を拡大し、いまやヒップホップ〜ビート・ミュージック・ヘッドも、エレクトロニック・ミュージック・ジャンキーも、ジャズ・ファンをも取り込んでおり、なおかつ他アーティストに多大な影響を与え、シーンに新しい潮流を生み続けているフライング・ロータス。音楽を語る上でジャンルやカテゴライズが無くては不便極まりないが、そういったものとは別次元に存在する彼のようなアーティストも、音楽にはやはり必要だ。

Reviewed by

Play on youtube

Share this Article

Like
Tweet
Share
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>