今、最もライブを観るべきバンド、WONK [ライブ・レポート]

November 15,2016 | Category :  Article | Tag :  WONK,

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デビュー・アルバム『Sphere』をリリースしたばかりのWONK。大成功に終わったワンマンライブを振り返る

WONK。いまやすっかり日本のブラックミュージック・シーンを語る上で欠かせない存在となった4ピース・バンドである。彼らが自主的にリリースした1stアルバム『Sphere』の発売を記念し、12日(土)に初となるワンマンライブが渋谷PLUGで開催された。筆者は今回で彼らのライブを観るのが5度目になるのだが、彼らのライブは何度観ても飽きない。全く同じセットを2度観たことはなく、毎回何かしら楽しい驚きを用意してくれるのだ。今回はワンマンということで時間もたっぷりとあり、WONKというバンドの力量をしかと見届けることができた。

スタートする20分ほど前に会場につくと、予想していたとおり会場内はパンパン。キャパ200人のフロアスペースが完全に満たされ、入り口付近で首を伸ばしながら観る羽目になった人も多くいた。筆者も後方になってしまったため、ステージを間近で観ることができなかったのが残念だが、そのかわり会場内を見渡しオーディエンスを観察することができたのは興味深かった。お客さんの大半は20代から30代に見えたが、幅広い音楽性を擁するWONKらしく、様々なタイプの人が集まっている。Bボーイ風の者たちはヒップホップの文脈からWONKにたどり着いたのだろう。大学生くらいに見える者たちは彼らの演奏から学ぼうとしているジャズ研の部員だろうか。おとなしそうなオバサマはショップでなんとなく試聴した彼らのCDに惚れ、思い切ってライブに足を運んだのかも。目を輝かせてWONKの登場を待っている若い女性のなかには、ヴォーカリストのKento Nagatsukaの甘い歌声とルックスにやられてファンになった人も少なくないかもしれない。

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WONKの1st EP『From The Inheritance』でライブが幕開け

理想的なアルバムがそうであるように、理想的なライブにも起承転結があるもの。今回の彼らのライブはこれまで以上に構成がしっかりと練られている印象を受けた。デビューEP『From The Inheritance』の楽曲で始まり、間にカバー曲をはさみ、後半は新作『Sphere』の楽曲をメインに展開し、最後にまたもやカバー、といった流れ。ライブそのものが1枚のアルバムのように展開するような、まとまりの良さを感じた。

まずは『From The Inheritance』のイントロが流れてライブがスタート。1曲目は『Sphere』収録の「Over」であったが、アルバムよりメロウでジャジーにアレンジされており、静かにライブが始まる。そして『From The Inheritance』から「Feelin’ You (Y.N.K)」。ドラマーHikaru Arataがテンポ軸から解放された自由度の高いグルーヴを精確に刻み、ベーシストKan Inoueがそれに巧みに呼応し、その上層にキーボードのAyatake EzakiとヴォーカリストKento Nagatsukaが心地良い音色を響かせていく。そして同EPの「ido」を披露し、会場の温度は徐々に高まっていった。

WONKが魅せる、マイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダーの再解釈

ここでKento Nagatsukaが簡単なMCを挟む。WONKは自身のことを“エクスペリメンタル・ソウル・バンド”と銘打っているが、このフレーズが一種のイメージを植え付けてしまっているようだ。そのキャッチフレーズは「実験的なソウル・ミュージックをやるという意味ではなく、自由に、ジャンルに関係なくグッと来る音楽をやる」という意味で謳っているのだと説明。メンバーのルーツはそれぞれバラバラであり、「クラシックをやってた人、ジャズをやってた人、ヘビメタバンドにいた人」もいると語る。そして、そういった様々な音楽背景を持った彼らの間にも共通して尊敬している先輩アーティストたちはおり、そういった偉大なる先達に敬意を表する意味を込めて、数曲カバー曲をやりたいとKento Nagatsukaは言った。

カバー曲はWONKのライブの楽しみのひとつ。原曲の魅力を殺すことなく、完全にWONK色に染めてしまうことに彼らは長けているのだ。関係者には受付でセットリストが配られていたため、ここで次に何がくるのがわかってしまったのが少し残念だったが、マイケル・ジャクソンが後期に発表したネオソウルな名曲、「Butterflies」というチョイスに心が踊らないわけがない。BPMを若干下げたのか原曲よりもメロウ度が増しており、Kento Nagatsukaはサビの高音を無理に出そうとするのではなく、低く歌うことで自分らしい歌い方にアレンジしていた。その次はスティービー・ワンダーの「Lately」。ストレートなソウル・バラード風味に仕上がっており、やはり真似が難しいスティービーの歌唱をKento Nagatsukaは自分のものにしていた。

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Dian、Kohei Andoらゲストを招いて、話題のアルバム『Sphere』を披露

ここで、彼らのライブではお馴染みであるシンガーNao KawamuraTomoko OsakaSaki Hayakawaからなるコーラス隊と、サックス/フルート/ギター奏者Kohei Andoが登場。ニューアルバム『Sphere』のイントロで第二幕の幕開けを宣言し、同作より「1914」に突入。変拍子が特徴的な曲であり、独特なリズムに合わせてノれるか否かで、音源をある程度聴き込んでいる客かどうかわかってしまう曲だ。Kohei Andoのサックスが活躍する「h.v.c」や、ドラム&ベース的なリズム・パターンでHikaru Arataの技術力の高さに翻弄させられる「RdNet」が続く。

そして更にスペシャルゲスト、KANDYTOWNよりラッパーのDianが参戦。人気ヒップホップクルーの一員だけあり、会場の反応が大きい。彼のラップがフィーチャーされている2曲、『From The Inheritance』収録の「New Shit」と『Sphere』収録の「DOF」を立て続けに披露。エフェクターで歪んだ音がぐにゃぐにゃと脈打ちながら、打ち込みと生ドラムを重ねたリズムの上で跳ね、Dianがスピットするライムをオーディエンスに届けた。フロアでは手や頭がグルーヴに合わせて前後に揺れていた。

ホール&オーツの超絶ソウル・ジャズ・カバー

さてここで、ホール&オーツ「I Can’t Go For That」のカバーが登場。以前のライブでこのカバーを目撃し、そのアレンジの妙に感動した経験がある。今回はこの80sヒットが更にソウル・ジャズ風にアレンジし直されており、驚くべきことに以前よりも完成度の高いカバーに仕上がっていた。原曲のコードやメロディーから、琴線に触れる珠玉の音だけを抽出し弾き直したようなAyatake Ezakiの美しい旋律。最初は静謐に始まり、サビで音が増幅し、後半でまた静かになるというダイナミックな展開が圧巻であった。

そしてここでインプロ・ジャムセッションが勃発。WONKの要であると言えるHikaru Arataの並外れたリズム感で変幻自在に展開するドラミング。その有機的なリズムにしなやかに応じてみせるAyatake EzakiとKan Inoue。WONKがただオシャレでアーバンなバンドに落ち着いていない理由は、彼らのスリリングで鬼気迫る演奏を目の当たりにすればわかるはずだ。

WONK結成のきっかけでもある、Jディラに敬意

次に続いたのはなんとJディラ・メドレー。「E=MC²」、「Look of Love (Remix)」、「The Light」などJディラが手がけた名曲が次々と演奏され、興奮を隠せなかったのは筆者だけではないはず。「The Light」でサンプリングされたボビー・コールドウェルのパートをKento Nagatsukaが見事に歌い上げ、筆者の目頭が熱くなったのはここだけの話。

なお、ディラの楽曲をメドレー形式でカバーするというとどうしてもロバート・グラスパーの「Dillalude」シリーズを思い出すが、そもそもHikaru Arataは「Jディラっぽいビートを生バンドでやりたい」という思いでWONKを結成しており、ロバート・グラスパーが登場したときは「先を越された」と感じたそうである。ロバート・グラスパーの後追いではなく、彼らは同時期に同じところに目を向けていたのだ。

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WONKサウンドが詰まった「savior」と、ディアンジェロへの接近

締めの曲は『Sphere』の中でも人気曲である「savior」。WONKを聴いたことがない人に1曲薦めるとしたら、この曲にするかもしれない。WONKらしさ(と筆者が勝手に思ってるもの)がバランス良く詰まった曲であり、フィナーレに相応しい盛り上がりでライブは終焉を迎えた。

と、一旦ライブが終わったと思わせてのアンコール。「まさかアンコールがあるとは(笑)」と笑顔で戻ってきたKento Nagatsukaとメンバーたち。最後に披露してくれたのは、これまた以前ライブで観て鳥肌が立った、ディアンジェロの「Africa」のカバーであった。原曲のメロウさをそのままに、サビではより壮大な情景を描き出し、類まれなセンスと演奏技術でまたしても鳥肌モノなパフォーマンスを見せてくれた。

ヒップホップ、ジャズ、ソウルの枠組みを飛び越えて躍進するWONK

終盤のMCでKento Nagatsukaが、今後は地方や海外への進出も積極的に行っていくことを宣言していたが、日本各地、そして世界の様々なステージに立つ日もそう遠くないだろう。彼らのライブを観るたびに、会場は広くなり、客入りが良くなっている。音源が素晴らしいのはもちろんだが、彼らのバンドとしての本当の面白さはライブにあるのではないかと思う。そして今回のライブの客層や、ライブ後のツイッターの反応を見るかぎり、どうやら彼らの音楽はすでにヒップホップやジャズ、ネオソウルの文脈を通っていない層にまで響き渡っている。自身のレーベル、epistrophも始動しており、同世代のミュージシャンを巻き込んだムーヴメントを勃興させようという大規模な野心まで抱いている彼らは、確実に今後の日本のシーンを変えていく存在だろう。

Words by Danny Masao Winston / Photos by Yusuke Abe

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