ロバート・グラスパー・エクスペリメント@ブルーノートNY [ライブレポート]

July 22,2016 | Category :  Event Live Report Review | Tag :  BIGYUKI, Bluenote, Christian Scott, Jose James, Marcus Gilmore, Robert Glasper, Taylor McFerrin,

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2016年6月22日から6日間、ニューヨークのブルーノートでライブを行ったロバート・グラスパー。ライブでは、テイラー・マクファーリン、マーカス・ギルモア、ホセ・ジェイムズ、クリスチャン・スコット、そしてWPJブログも執筆しているBIGYUKIという、日本ではなかなか見ることができない素晴らしいラインナップが揃った。NY在住のライター、Aiko Moritaが興奮を現地から届けてくれた。

オーガニックに作り出される即興の音

「ただ今の時代を反映させて、自分のストーリーを表現しているだけなんだ」、と先日公開のWPJ読者参加型インタビューにて語ってくれたロバート・グラスパーのパフォーマンスは、「What’s up (元気) ?」とカジュアルな挨拶から始まった。無造作に鍵盤に触れキーを確認し、滑らかに一曲目がスタート。まるで彼のプライベートスタジオに招き入れてもらったような、自然で特別な私空間。そんな感覚だ。

「『俺のやっている音楽はジャズじゃない』という人は、歴史にこだわり過ぎて変化を恐れているだけさ。」そう語る彼との当日のセッションメンバーは、スタンダードジャズにはないユニークな構成だった。1人目は、ボーカリストでありクラシック指揮者のボビー・マクファーリンの息子のテイラー・マクファーリン。プロデューサー、キーボードリストであり、またビートボクサーでもあるマルチタレントアーティストだ。また、「日本のロバート・グラスパー」とグラスパー本人からも評価を受けるキーボーディストBIGYUKI、またコンポーザー、アーティストでもあるドラマーマーカス・ギルモアが全曲参加。彼らに加え日本でも人気の高いシンガーホセ・ジェイムズ、そしてエジソン賞(Edison Award)を2度受賞、グラミー賞ノミネートでも話題のトランペットプレイヤークリスチャン・スコットが特別ゲストとして出演。メンバー全員が20—30代という、ロバート・グラスパーらしいフレッシュでユニークなメンバー構成だ。

1曲目は、テイラー・マクファーリンのオリジナル曲「Almost There」。原曲をかなり崩し、ライブセッションの中で各メンバーがオーガニックに空間を共有していた。マクファーリンの生み出すコズミックなシンセサイザーの上音に、背後から迫って来るようなBIGYUKIのベースとマーカス・ギルモアのドラム、その中にロバート・グラスパーらしいソフトで優しい鍵盤の奏でる音が、オーディエンスを彼らの生み出す異空間へと招き入れた。それはまるでしっとりと降る午後の雨を窓から眺めているような、そんな穏やかな感覚だった。

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地響きのするような土臭く熱量の凄まじい響き、「生」のエネルギー

2曲目にはトランペットのクリスチャン・スコットが参加。テイラー・マクファーリンの作り上げるビートとBIGYUKIのベースから演奏が開始された。メランコリックなメロディでスタートしたクリスチャン・スコットの奏でる音色は、彼の若さから滲み出る強くたくましい「生」のエネルギーそのものであった。地響きのするような、土臭く熱量の凄まじい響き。それはまるで、個人、社会の背負う痛みやダークなサイドを抱え込みながらも力強く後押しし、前を向いてひたすら「今」を生きるような、そんな凄まじいエネルギーだ。彼のトランペット、ジャズ、いや音楽までも超える「生」に対する熱いパッションは、あらゆるエネルギーをポジティブなものへ変えていくような圧倒的な強さを感じさせる。ロバート・グラスパーも一曲目とは違い、肩を強く揺らしながらアグレシッブなプレイを見せてくれた。セッション全体が動物的、本能的エネルギーが剥き出しの儀式のようなサイケデリックさを持っており、筆者は完全に別次元に連れて行かれてしまった。クリスチャン・スコットはこの一曲のみの参加ではあったが、今回のパフォーマンスのハイライトを作ったのではないだろうか。

そして3曲目には ホセ・ジェイムズが参加。今の社会問題を訴えるリリックには、怒りの持つパワーだけでなく、彼自身の強さと色気も感じられ、ロバート・グラスパーと共にHip HopとJazzを融合させたスタイルで オーディエンスを魅了。グラスパーの肩に手を回しながら歌うホセ・ジェイムズの姿は、彼らのアーティストとして互いにリスペクトし合う意思を伺わせた。

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即興で目の前で作られる艶かしく繊細なセッション

その後間もなくテイラー・マクファーリンから始まるジャムセッションがスタート。所謂スタンダードジャズには見られない、ニュースクールHip Hopのビートに乗せマクファーリンの高速ヴォイスパーカッションに、中盤から入るBIGYUKIのミステリアスなベースがスパイスとなり、その次のBIGYUKI自身から始まるジャムセッションへとの見事な繋がりを見せる。また、メランコリックで小刻みなビートのベースラインから、突然降りかかってきたような滑らかなシンセサイザーの音は、ベースに新たな息を吹き込み、BIGYUKI独特の魅惑的な音色を奏でていた。艶かしく繊細なセッションは、即興で目の前で作られているとは信じ難い完成度で、マジックとも言えるほどであった。

そして最後はRadioheadの5thアルバム『Amnesiac』収録の「Packt Like Sardines in a Crushd Tin Box」をカバー。原曲の持つ疾走感に、マーカス・ギルモアの見事な高速のドラムの手さばきと、BIGYUKIのうねるようなベースが高揚感をプラスさせ、ブレイク時に舞い降りるロバート・グラスパーの有機的なピアノとテイラー・マクファーリンの柔らかいシンセサイザーの音が、アンニュイで洗練された空間を作り上げていた。

パフォーマンス終盤には全員が目を閉じながら演奏していたが、息のぴったりあったサウンドにオーディエンスもいつの間にか飲み込まれていた。今回の一時間弱のパフォーマンス中で時折やってくる神がかった一体感は、決して筆者だけが感じたことではないだろう。全ての音が宙で滑らかに溶け込んでいくような感覚、またふんわりと人々をその渦の中に連れ込んで行く感覚は、生のパフォーマンスならではのオーガニックなものであることに間違いない。

全曲を通し彼らの見せてくれた演奏は、まさに今の時代を反映させた新しい独自のスタイルであり、スタンダードジャズの枠を完全に飛び超えた音楽であった。ジャズという言葉には収めることのできない、若くエネルギッシュで魅力に満ち溢れたパフォーマンスは、現在来日中の「Robert Glasper Experiment」でも感じられることは間違いないであろう。ロバート・グラスパーというアーティストの生み出すストーリーは、今後も更に進化していくことはまちがいなく、これからもますます目が離せない。

b&w minami
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関連: BIGYUKIアーティストブログ | WP(英語版) ホセ・ジェイムス インタビュー

グラスパーからWPJ読者へのビデオメッセージ

Taylor McFerrin – Already There (feat. Robert Glasper and Thundercat)

EVENT INFORMATION

- Robert Glasper 日本公演日程 -

  • 7/20 (水) ビルボードライブ大阪
  • 7/21 (木) ビルボードライブ大阪
  • 7/23 (土) UMK Seagaia Jamnight 2016 / 宮崎県宮崎市
  • 7/24 (日) フジロックフェスティバル / 新潟県湯沢町苗場スキー場
  • 7/25 (月) ビルボードライブ東京
  • 7/26 (火) ビルボードライブ東京
  • 7/27 (水) ビルボードライブ東京

http://www.billboard-live.com/

Article by Aiko Morita, Photos by Mihee Suh, Edit by Minami Kato

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One thought on “ロバート・グラスパー・エクスペリメント@ブルーノートNY [ライブレポート]
  1. Roxy より:

    “The intrigera in me is wondering if that was a slight jab at the few “nao-so-retl” French restaurants in Manila.”Ha ha. You got it.Tasted through some very young Provençe wines yesterday lunch all the way to 7:30pm. Good stuff. Subjects of my next post.Best,N

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