DJ Jazzy Jeffインタビュー/DJジャジー・ジェフ

December 08,2014 | Category :  Interview | Tag :  DJ Jazzy Jeff, pickup,

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The Magnificent

ヒップホップのメインストリーム進出に貢献したパイオニア、DJジャジー・ジェフ

フレッシュ・プリンス名義で活動していた俳優/ラッパーのウィル・スミスと共にデビューし、80年代後半から90年代にかけて数々のヒットを飛ばし、ヒップホップのメインストリーム進出に貢献したDJ/プロデューサーのジャジー・ジェフ。解散後はDJとして世界を股にかけ活躍するかたわら、A Touch Of Jazz Productionを立ち上げ、良質なヒップホップやネオソウルの作品を多く手がけ、若手の育成に積極的に取り組んで来た。現在も精力的に活動しているこの多忙極まりないベテランに、来日に先駆けて話をきくことに成功。最近の創作プロセス、DJのあるべき姿、そして音楽業界の未来について、貴重な言葉の数々をいただいた。

 

— ツアーで忙しそうですね?

ここ最近はツアーをやっているか、スタジオで制作をしているかの日々だよ。1年の間にだいたい130日から140日間ツアーをしているんだ。ヨーロッパや中東は年に2回ほど、オーストラリアやアジアは年に1回ほど廻っている。それ以外の時は、スタジオで曲を作ったり、DJで使う用にエディットを作ったりだ。最近、デイン・ジョーダン(Dayne Jordan)というフィラデルフィアの若手ラッパーをプロデュースしていて、今年は彼の新曲を5月から毎月、ビデオ付きで公開してきた。最近は彼もツアーに参加しているんだ。
 
— 12月12日に来日が控えていますが、日本のシーンにはどういう印象をお持ちですか?

日本に来るのは大好きなんだ。客は音楽を解っているし、古い音楽も、新しい音楽も、ブレイクビーツとかもかけられる。音楽を通して冒険をしているような、そういう気分にさせるDJをやるのが俺は好きで、日本ではそれができるから楽しいんだ。日本には知識の深い、“本物”の音楽ファンが多い。俺の前のDJがシングルじゃなくてアルバム曲とかをプレイしているのを聞くと、音楽をちゃんと解ってる客が多いイベントだなと思って、嬉しくなるんだ。アメリカではそうはいかないイベントも多い。新曲ばかりだけでなく、幅広い選曲ができたほうが、間違い無く良いセットになる。数年前に出た曲と、20年前に出た曲を両方かけられるのがベストだ。日本でプレイするときは、俺の前のDJと後に来るDJを聞くんだ。なぜなら、彼らから学ぶことが多いからだ。そもそもそれがDJとしてあるべき姿なんだ。常に他のDJからインスピレーションをもらっているべきだ。日本にはそういう良いDJが沢山いる。
 
— DJセットは事前にある程度決めて挑むことが多いですか? それとも、即興でやる部分が大きいですか?

その間ぐらいだね。俺はDJで披露できるセットが60パターンぐらいあるんだ。それを時と場に応じて組み合わせていくんだ。そして新しく追加できるルーティーンも15パターンぐらいあって、それを常に新しく投入している。例えるなら、大きな鍋のスープに少しずつ食材を加えて、煮込み続けているような状態だ。
 
— ツアーといえば、あなたは去年から世界ツアーの模様を追ったドキュメンタリー番組『Vinyl Destination』を公式サイトで公開していますね。

もう何年も世界を廻って来た。だからそのことについてあまり深く考えなくなっていたんだ。空港に着いて、ホテルに行って、クラブに行ってギグをやって、また帰るだけってことも良くあって。俺はギグにずっと集中しているから、他のことにあまり意識が向いていなかったりする。だから、後になって『Vinyl Destination』を見て、俺たちこんなことやってたのか!と改めて思ったりするんだ。世界がどれほど大きく、そして同時にどれほど小さいのかが解って楽しいよ。

 

 

— 10歳でDJを始めたそうですが、DJに惹かれた理由は何だったのですか?

あるときブロックパーティーに行って、DJが何百人もの人々をコントロールしていたのを見て、衝撃を受けたんだ。曲をかけるだけで、多くの人々を幸せにすることができるのか!ってね。人々の感情を喚起させることができることに惹かれたんだ。

俺はDJをするとき人の感情を掻き立てるようなものをかけたい。だから俺は新しい曲よりも、古い曲をかけるほうが好きだったりする。なぜなら、新しい曲はまだ世に出てから年数が経ってなくて、人は「良い曲だな」ぐらいにしか思わなかったりするが、古い曲には想い入れを持っている人が多い。ノトーリアスB.I.G.の曲がかかったら、最初にその曲を聞いた時の記憶が甦って来るかもしれない。だから俺はそういう、琴線に触れるものをかけて、音楽的な旅を提供したいんだ。

歳を取れば取る程、世界を廻れば廻るほど、このDJという役割を通して人々に与えている影響を意識するようになってきている。22歳のときは、ただヤバい技を披露して、ヤバいDJだと思われたかった。今では、客がクラブを出たときに「あれは凄かったな」と思ってもらえるような特別な体験をしてもらいたい。ただ曲を順にかければいいだけじゃないんだ。(DJとは)曲でストーリーを伝える行為なんだ。客を絶頂へと連れて行き、さらに一旦落ち着かせ、更にもう一度上へと導く。客がバテてきたら、わざとバーに行ってもいいような曲をかけたりする。そして、客をバーからまたフロアへと引き戻すような曲をタイミング良くかけるんだ。それが、DJだ。起承転結を作ることだ。
 
— あなたにとって“良いDJ”とは?

DJにもいろいろある。まず、良い音楽を選ぶ選曲重視のDJがいる。それから、斬新でクリエイティブな曲のかけ方を見出す技術重視なDJがいる。一番良いのは素晴らしい選曲センスの持ち主で、技術的にも腕のある、両方に長けているDJだ。視覚的にも、聴覚的にも人を魅了することができるDJだ。
 
— それはつまり、あなたのようなDJですね?

まぁ、そうなれるように頑張っているよ。(笑)しかし俺はあまり目立ちたいほうじゃないんだ。音楽が主役であってほしい。そういう意味では、テクニックよりは選曲のほうが大事だと思ってる。なぜなら、音楽が第一だからだ。
 
— 若いDJにアドバイスをするとしたら?

音楽に関する知識をつけること。過去、現在、そして今後出て来るかもしれない未来の音楽に常にアンテナを立てておくことだ。そして、リスキーなことをするのを恐れてはいけない。 ただ皆が知ってるヒットを流すだけの無難なセットは、良いDJセットとは言えない。素晴らしいDJセットとは、予期していなかったような曲が飛び出し、客を驚かせるようなものだ。クラブに来た客の印象に残るのは、今まで何回も聴いてきた曲じゃない、誰も予想してなかった変化球をDJがかけたときだ。そしてそれをどうかけたか、そこを皆、後日語るんだ。

 

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— プロデュースに関してお聞きします。最近の創作プロセスは以前と比べてどう違いますか?

今はテクノロジーのおかげで何でもできるから最高だ。全てのクリエイティブ・コントロールが自分にあるところが嬉しい。「今はこういうものが流行ってるから、こういうのを作ってくれ」とか言ってくる人は誰もいない。音の鳴り、ミックスの仕方、曲の尺だって全てが俺たちの意のままだ。そしてもちろん、ビジュアル面も俺たちの思い通りだ。今までこれほど自由に制作できることは無かったんだ。その自由には、良い面だけではなく悪い面もある。何も制限がないと、どのように始めればいいか解らなくなるときがあるんだ。何らかの方向性が定められたほうが、進みやすかったりもするから、自由すぎるとそれはそれで大変だ。
 
— デイン・ジョーダンとの制作はどうですか?

たいていの場合、何か作品として出すことを想定してスタジオに入ると思うが、ここ最近俺たちは具体的にアルバムを出すことなどを考えずに、ただ感じるままに曲を作っていたんだ。この前南米でツアーをしたんだが、南米のレコードをたくさん買って来た。これで5曲、南米の音楽をサンプリングした曲を作って、EPにして向こうのファンにあげようじゃないか、っていうノリで作ってしまう感じだ。ただ新しくてクリエイティブなことをやろうとしているんだ。アルバムを1枚作ったらそれで作品作りは終わり、ということにはしたくない。アルバムが完成した直後に、もしかしたらベストな曲が生まれるかもしれないじゃないか。昔からこういう音楽の作り方をしたかったんだが、業界の仕組み的に難しかったんだ。
 
— ご自身の過去作品は今でも聴きますか? 例えば、ソロアルバムの『The Magnificent』や『The Return of The Magnificent』など。

ああ、『The Magnificent』は初めて100%自分の意思で制作したアルバムだから、今でも気に入っているよ。あのアルバムにはヒップホップも、R&Bやソウルも、ハウスも、俺の好きなものが全部詰まっていたんだ。ところで、最近の若手の良い所はジャンルに縛られていないことだ。ソウルもハウスもブームバップもトラップも全部やってる。昔みたいに、すべてを純粋にただ“音楽”として捉えているようで、それが嬉しいんだ。昔もそうだったが、いつのまにか自分のことを“ヒップホップ・プロデューサー”だとか、“ハウス・プロデューサー”だとか、あるいは“ヒップホップのDJ”、“EDMのDJ”とか決めつけてしまう人が増えてしまった。でも、ひとつの音楽ジャンルしか好まない人なんて、この世にいるかい? 俺が若い頃は、DJは人が踊りたくなるものを何でもかけていたんだ。DJギグには30枚のレゲエのレコード、100枚のヒップホップ・レコード、20枚のハウスのレコードとか、何でも持って行ってた。しかしいつのまにか「俺はヒップホップはかけない」とか、「俺はEDMはかけない」とか言う人たちが増えていった。素晴らしいDJは何でもかけるんだ。
 
— またソロアルバムを作る予定はありますか?

考えてはいるよ。しかし今はデイン・ジョーダンと作った曲を集めてアルバムにすることに専念している。アルバム分の楽曲はほぼ完成していて、とても満足している。俺がここ20年の間に作って来た音楽の中で、一番自信が持てる作品になりそうだよ。そしてこのアルバムを作っていて、今後やりたいことに気づかされた。というのは、『The Magnificent』の曲はツアーでライブをやるのが難しかったんだ。何しろ参加したミュージシャンやヴォーカリスト全員を連れて行くことはできない。だから、ライブ環境でちゃんと披露できるアルバムが作りたいと思っていて、それが今回実現できたと思う。これはもしかしたら、デイン・ジョーダンをフィーチャーした『The Magnificent』シリーズの続編、という形になるかもしれない。このシリーズは毎回ゲストを何人も招く必要があるわけじゃないんだ。1作目はオディシー(Oddisee)とかラヒーム・デヴォーン(Raheem Devaughn)とかケヴ・ブラウン(Kev Brown)とか、まだ当時あまり知られていなかった若手を招いたアルバムだった。その後、彼らはそれぞれの活動で脚光を浴びるようになった。2作目はメソッドマンとかCLスムースとか、比較的知られている人を呼んだ。だから3作目はひとりのアーティストを中心にしたものになってもいいかもしれない。

 

 

— デイン・ジョーダンとの制作を始めたきっかけは何だったのですか?

デインとは6年前に知り合った。デインはそれまでルーペ・フィアスコとツアーをしたこともあり、自分で作品作りをしていた。あるときデインたちにうちのスタジオを貸してあげたことがあったんだ。彼のライブDJのDJファーノ(Ferno)に機材の使い方を教えていて、トラックを作って、ついでにデインにブースでラップを乗せてもらったんだ。予想以上に良いものが出来て、それがきっかけでコラボレーションが始まったんだ。それから彼に音楽のことを教えたり、聴くべきアルバムを渡したりした。曲作りを通して、彼がアーティストとして成長していくのを俺は見ていた。ある程度曲ができたから、今度はビデオを作って曲をアップして、人に聴いてもらおう、という話になったんだ。こうやってアルバムが出来上がっていったわけだ。アルバムは来年の頭ぐらいに出せたらと思っているよ。
 
— 今後、音楽業界はどのような方向に進むと予想しますか?

今後はアーティストが全ての主導権を握るだろう。今でさえすでに、メジャーレーベルに所属することはイケてない、みたいな考え方が広まっている。例えばDef Jamと契約したとしよう。アルバムが出るまでに7、8ヶ月かかると言われる。でもやろうと思えば、俺が今日(水曜日)にスタジオに入ってアルバムを作り、明日ビデオの撮影をし、月曜日にはリリースすることだって、今の時代可能なんだ。そんな時代に、なぜリリースまでに半年もかかるんだ? 大きいレーベルであれば人材や金はあるのに。大量にレコードをプレスする必要だってもはやなく、すぐに作品を発表することができる時代だ。インディーズで活躍している、例えばオッド・フューチャーの面々やマック・ミラーとかは直接ファンに作品を届けていて、作品作りを完全にコントロールしているんだ。昔はデモを制作し、レーベルの重役の誰かに渡し、気に入ってもらうことを願い、運が良ければ予算をもらい、アルバムを完成させ、ビデオを撮影し、レーベルのリリース・スケジュールに追加してもらい、ラジオでシングルをかけてもらえるようにお願いし、ファンに気に入ってもらえることを祈り、もし運さえ良ければ、日本まで行ってライブをやらせてもらえるかもしれない、という流れだった。しかし今では、そんなシステムに頼る必要はまったくないんだ。昔は、ひとりの重役に自分の作品を委ねていたわけで、その人が気に入らなかったら、それは一生世に出ることはなかったかもしれないんだ。史上最高のアルバムになったかもしれない作品の運命を、たったひとりが握っていたんだ。
 
— 今、音楽で食べて行くには何をするべきでしょう?

まずしっかりとファンの基盤を築き上げることだ。自信を持って人に聞かせられる音楽ができたら、真っ先にシェアするべきだ。Facebook、Twitter、Instagramにポストするなり、友人達に聴いてもらって、彼らの友達にシェアしてもらうなりして、とにかく多くの人に聴いてもらう。もちろん、まず第一に良い作品を作らないとだめだが。良い作品であれば、あとは少しずつファンを増やしていけば良い。1人のファンを2人に、2人のファンを4人に、4人のファンを8人に、という感じだ。自分で積極的にプッシュしていかないといけない。今時、アーティストはただ作品を作るだけじゃだめなんだ。自分でプロモーションも、広報活動もやらなくてはいけない。最初はプッシュして、ファンを獲得していき、そのうち勝手に口コミで広がっていく状態が理想だ。

 

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— ストリーミングという音楽の聴き方について、どうお考えですか?

俺はストリーミングは素晴らしいと思う。まず、この世から音楽がなくなることは絶対にない。ただ、人々が今までのように音楽を“購入”することは、しなくなるかもしれない。だからビジネス的には、どうやって音楽を無料で提供して、お金を稼ぐことができるか考えないといけない。いくらでも方法はある。マック・ミラーだとかマックルモアーといったアーティストがすでにそういったビジネスが成り立つモデルがあることを実証している。今時、人は車の中だとか家の中、スピーカーとかで音楽を聴くよりも、スマホで聴いている。だから、そういったデバイスで自分の音楽を聴いてもらうにはどうすればいいか、と考えないといけない。その答えは、もしかしたらSpotifyや Pandoraのようなストリーミング・サービスかもしれない。とにかく人に届けることが何より重要だ。俺は10年前からこう言ってきたんだが、10万枚のアルバムを売るのと、100万人に無料で音楽を届けるのと、どっちのほうが自分の音楽活動により大きな影響を与えるか、考えるべきだ。俺は、10万人に買ってもらうよりも、100万人に聴いてもらいたいと思っている。
 
— ウィル・スミスのお子さんは音楽活動を行っていますが、あなたのお子さんも音楽を志していますか? また、そのことについてどう感じますか?

ああ。長男はジャーナリストなんだが、15歳の次男はAMIRacleという名前でラッパーをやっていて、今年の夏にアルバムを完成させたばかりだ。あとディズニー・チャンネルの番組にも出演しているよ。次男のアルバムはとても良い出来だ。彼は作詞、レコーディング、アレンジまで、アルバム制作の70%ぐらいを自分で手がけたんだ。俺も何曲かプロデュースしている。今は学校と、音楽活動と、俳優業をどうバランス良くこなすかを悩んでいるようだ。ウィルとこの話を良くするんだ。自分の子供は、自分がやっていることにそれほど興味を持っていないと親として思ってしまうものだが、実は彼らはちゃんと俺たちのことを見ていて、しっかり影響されていたんだ。

 

 

— 業界の先輩として、息子さんにはどういうアドバイスをしましたか?

それが、面白いことに、彼にアドバイスをするのと同じぐらい彼からもアドバイスをもらっているんだ。彼の世代は境界線のない、DIY世代だ。さっきから俺が言っていることの多くは、彼からもらった知識だ。俺はまだレーベルと契約をしてアルバムを出すのが当たり前だった世代のひとりだから、彼やデインに今の時代の音楽のやり方を学んでいるんだ。俺とウィルが音楽を始めた頃は、俺がビートを作って、ウィルがラップを書いて、カセットに録音して、人に配っていた。だが今はそれがメールでできてしまう。自分たちだけで作品を世に出すツールが全て揃っている。しかし、あのとき俺たちが感じていたワクワク感を今息子たちが感じているのを見ていて、嬉しいよ。
 
— これまでの活動の中で最も誇りに思っていることは何ですか?

俺はあまり過去を意識しないんだ。自分のキャリアを振り返って、満足をしだしたら、その時点で終わる気がする。それに、俺は今まででよりも一番、今頑張って動いている。心から愛することをしてお金をもらえて、とても恵まれていると思っているよ。これは、できなくなるまでやり続ける。俺にとって音楽は仕事ではなくて、人生そのものだ。辞めたり、引退をするようなことではなくて俺の一部なんだ。俺が音楽をやらなくなったとしたら、それは身体の自由がきかなくなってしまったか、もうこの世にいないときだ。

 

Interviewed by Danny Masao Winston

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