Prefuse 73インタビュー/プレフューズ73がニューアルバムを語る

May 15,2015 | Category :  Interview | Tag :  Guillermo Scott Herren, Prefuse 73,

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Reinvigorated: 再び刻み始めた鼓動

久しぶりのアルバムで原点回帰してみせたビートマエストロ、プレフューズ73

2000年代初頭にヒップホップと実験的エレクトロニック・ミュージックが衝突し、インテリジェント・ダンス・ミュージック(IDM)など新たなムーヴメントが世界的に起こり始めたが、プレフューズ73ことギレルモ・スコット・ヘレンが2003年にリリースした『One Word Extinguisher』は、まさにこの画期的なシーンの台頭を象徴するマスターピースだった。90年代のヒップホップのサンプリング美学を踏襲しつつも、ボーカル・ネタを細かくチョップして打楽器的に使うという画期的な手法を彼は生み出した。その後、その手法を真似するビートメイカーが続々と登場すると、彼は方向性を変え、サード・アルバム『Surrounded by Silence』からボーカリスト、ラッパー、ロック・バンドなどを多彩に採り入れ、より生演奏をフィーチャーするようになった。

プレフューズ73の活動と並行して、彼はデラロサ&アソラ名義で実験電子音楽、サヴァス&サヴァラス名義ではフォークや自身のラテンのルーツ・ミュージックを探求し、ドラマーのザック・ヒルとダイアモンド・ウォッチ・リスツ名義などでも作品をリリースしている。UKの名門エレクトロニック・レーベル、Warpを離れた彼は、自身の新レーベルであるYellow Yearから、ティーブスとのコラボレーション・ユニット、サンズ・オブ・ザ・モーニングや、ノサッジ・シング、マシーン・ドラムとのコラボレーション作品もリリースした。

しばらくビートメイキングから離れているように思えたスコット・ヘレンだが、4年ぶりのプレフューズ名義のアルバム『Rivington Não Rio』と共に、『Forsyth Gardens』と『Every Color of Darkness』という2枚のEPを完成させたが、ここではテクニックをひけらかすのではなく、プレフューズ73という独自のメランコリックでありながらも、緻密なビートメイキングの世界観の貫禄を見せ付けた。世界中で次々とビートメイカーを名乗る若手クリエイターが登場するなか、プレフューズ73はそれとは一線を画した孤高の存在であるということを再び証明した。

――昨年はしばらくLAにいたそうですね。

2014年5月から10月末まで住んでいた。LAはよかったけど、車がないと本当に何もできないから、諦めてニューヨークに戻ったんだ(笑)。だから、西海岸の夏は全く満喫できなかったよ。やっぱり東海岸で生活するほうが慣れているから、ニューヨークに戻ることにした。ニューヨークを離れる人は、ニューヨークの冬が嫌になったり、いつも歩くことが嫌だったり、ニューヨークのクレイジーな人が嫌だったりするけど、俺は逆にそういうものが恋しくなった(笑)。LAの雰囲気はリラックスしているし、好きだけどね。

――新作はLAでも制作したのですか?

アルバム制作は2013年10月から2014年9月までかかった。始めたのは、LAを出発する前だったね。アルバムの制作には結構時間がかかったし、たくさん曲を作ったから、アウトテイクも数多くあるんだ。アイデアがわんさかある。ニューヨークに戻ってから、2枚のEPをレコーディングしたけど、全部の曲に一貫性があるんだ。

プレフューズ73名義にブランクがあった理由

――プレフューズ73名義としてはしばらくのブランクの後、突然アルバム『Rivington Não Rio』と、2枚のEPを同時にリリースすることになりましたが、なぜ4年間のブランクがあったのでしょうか?

過渡期だったんだ。常に作品をリリースするのではなく、他のアーティストとコラボレーションしたり、少し充電したりしていた。音楽制作のテクノロジーが安価になったのは悪いことじゃないし、たくさんの人が音楽を作れるようになったのは素晴らしいことだと思う。でも、同じような音楽を作る人が増えたのも事実だ。スクリレックスが悪いとは言わないけど、みんなが彼の真似をし始めて、それまでのエレクトロニック・ミュージックが否定されたような気がした。

多くのビートメイカーが、なんらかのシーンに所属するために、ひとつのスタイルを真似するようになったんだ。車のCMみたいな音楽ばかりになってしまったね(笑)。安易なクラブ・ミュージック的な音楽が氾濫するようになった。俺が好きなエレクトロニック・ミュージックは、美しいテクスチャーのある音楽と、ヒップホップ的なものなんだ。ヒップホップは、いろいろな意味で音楽を進化させたけど、その成果があるときから全て放棄されたような気がした。ヒップホップさえも、どんどんEDMのようになってしまって、退屈だったね(笑)。

――それで燃え尽きた?

そうだね。しばらくエレクトロニック・ミュージックに退屈していたんだ。Stones Throwのドキュメンタリー映画のなかで、マッドリブがビートばかり作っていて退屈したから、イエスタデイズ・ニュー・クインテットを始めたと言っていたけど、俺も似たような気持ちだった。もちろん、ビートメイキングをやめたわけではなく、他のスタイルの音楽も追求したくなったんだ。より実験的な音楽を作ったり、誰かとコラボレーションしたりしたくなった。しばらく宇宙旅行をすることで、地球に戻ったときに、自分にとっていい音楽と悪い音楽をもっとクリアに判断できるようになったんだ(笑)

Prefuse73_1_©TimSaccenti

――ビート作りの情熱は何がきっかけで再び戻ったのでしょうか?

ビートメイキングへの情熱がなくなったことはないけど、ビート・ミュージックを聴きたくなくなった時期があったのは確かだね。ある時期から、みんなの音楽が同じように聴こえるようになった。みんな、互いに真似し合っていて、使っているサウンドやプロダクションが似すぎていた。別名義で他のスタイルの音作りを探求するようになったから、俺は音楽制作の情熱を失わずに済んだんだと思う。

――最近は若手のビートメイカーが次々と登場していますが、こういう状況で作品を出すことにプレッシャーを感じますか?

それは全くないね。俺は自分のサウンドがどういうものなのか知っているし、それは誰の真似でもないことも知っている。自分のスタイルを貫くことに自信があるし、何かを証明しないといけないわけでもない。俺は音楽を通して目立ちたいわけじゃないし、自然に自分の音楽を作れるんだ。今までやってきた音楽の流れをアップグレードしている。

――この4年の間、あなたはリシル、サヴァス&サヴァラス、ダイアモンド・ウォッチ・リスツなどのコラボレーション作品や別名義作品をリリースしましたが、このようなプロジェクトから学んだことは、プレフューズの最新作に影響を与えましたか?

俺の別名義の作品は、特にプレフューズには影響を与えていない。それぞれのプロジェクトのクリエイティヴ・プロセスが違うからね。一緒に作業している人が違うと、アプローチも違ってくるんだ。

――なぜ古巣のWarpではなくニューヨークのインディ・レーベル、Temporary Residence(国内盤はRUSH! × AWDR/LR2)からリリースすることにしたのでしょうか?

Temporary Residenceを運営しているジェレミーはニューヨークの俺の近所に住んでいるし、すごくいい奴なんだ。Warpは大きなレーベルだし、長年Warpからリリースしてきたから、もっと小規模のレーベルからリリースしてみたくなった。所属しているアーティストの数も少ないから、やりやすいね。

原点に立ち返ったプレフューズ73の新作

――アルバムと2枚のEPのサウンドでは、あなたは原点に戻り、声ネタを細かくチョップしていますが、今回はどういうアプローチで制作したのでしょうか?

これは原点回帰の作品だね。Ableton、MPC、Pro Toolsとか、俺が使っている機材を全て組み合わせたんだ。楽器を演奏したり、ドラムを叩いたり、レコードをサンプリングしたり、あらゆる手法を採用した。それに、過去のプレフューズの作品と比べると、音質的にもだいぶアップグレードされている。自分の声も使ったし、レコードもサンプリングしたし、他の人の声も使ったし、ありとあらゆる音を使ったんだ。

フェンダー・ローズ、ギター、クラシック・ギター、生ドラムとかも使ったね。ファーストのタイトルは『Vocal Studies + Uprock Narratives』だったけど、昔から声ネタを使うことに興味があった。それは15年も前の話だけど、今回ビートを作っている最中で、自然とまたその傾向が出てきたんだ。俺にとってバランスのいい曲を仕上げるために、必要不可欠な要素がいくつかある。アナログの音色、加工されたデジタルの音色、豊富な音のテクスチャー、そして低音。そういう要素のバランスや調和が取れていることが大事なんだ。

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――『Rivington Não Rio』というタイトルの意味は? またコンセプトはありますか?

俺がニューヨークに住むようになった初期の頃を連想させるタイトルだ。ニューヨークのロウワー・イーストサイドのリヴィングトン・ストリートに、ABC No Rioというコミュニティ・センターがある。俺がプレフューズとして音楽を作り始めたとき、そのコミュニティ・センターの近くに住んでいたし、今も近所に住んでいる。このアルバムには特にコンセプトはないんだ。コンセプトを先に決めると、束縛されたような気持ちになるからね。このアルバムは1年かけて作ったから、先にコンセプトを練ることができなかったんだ。『Surrounded by Silence』を作ったときに、コンセプト・アルバムを作ることの大変さを思い知ったよ(笑)。それを繰り返したくなかったし、アルバムの楽曲はバラエティに富んでいる。

――2枚のEPのコンセプトを教えてください。

『Forsyth Gardens』は、俺が住んでいるニューヨークの近所をテーマにするEPだ。曲を作っては、近所を散歩しながらトラックを聴き返して、またスタジオに戻ってトラック作りに励んだ。それを繰り返したんだ。今住んでいるのはチャイナタウンの近くだけど、俺が住んでいる通りには、たくさんのガーデンや公園がある。朝、中国人のおばさんたちが太極拳をやったりしているよ(笑)。ハウストン・ストリートからチャイナタウンの終わりまで、ずっと公園や不思議なガーデンが続く。ガーデンはよく手入れされていて、彫刻があったり、サッカー場があったりする。ニューヨークで一番好きなエリアだね。“Forsyth”というのは、俺が住んでる通りの名前だ。『Every Color of Darkness』は、夜をイメージした作品なんだ。俺は昔から夜にトラック制作することはなかったけど、この作品は曲名も全て夜をコンセプトにしている。夜聴きたくなる曲ばかりだね。

新しい作品におけるアプローチ

――メランコリックでリラックスした空気感と、複雑なプログラミングが絶妙なバランスを織りなしていますが、この3作品のプロダクションで意識したことは?

メランコリックで内省的な要素は俺の音楽に一貫している。深い感情を表現しているからと言って、悲しい音楽になるわけじゃないんだよ。俺はいつも内省的な気持ちで音楽を作っているから、それが自然と反映されるんだ。90%の場合、俺は言葉を使わずに自分の気持ちを表現している。プログラミングも、表現方法のひとつなんだ。俺はもともとドラマーだから、あえて複雑なリズムを作るよりも、他の楽器の音とリズムの絡み合いや流れを大切にすることで、感情を表現しているんだ。自分を抑制することや、カウンター・リズムの入れ方に一番時間をかけているね。そこがチャレンジなんだ。

――アルバムのゲストについて教えてください。

ロブ・クロウは、ピンバックというバンドのメンバーだ。そのバンドが好きで、よくツアー中に聴いていたけど、特に彼のボーカルが好きだったんだ。彼がたまたまTemporary Residenceに所属していたから、トラックを送ってみると、翌日にボーカルを送り返してくれた。これは1年前にできた曲だね。バスドライヴァーは旧知のラッパーだし、互いの活動をサポートしてきた。彼がマイロを誘ってくれたんだ。

サム・デューは「Infrared」に参加してくれたボーカリストだけど、彼が以前やっていたバンドのミックスを担当したんだ。そのバンドはアトランタ出身だけど、解散してしまった。その半年後に、彼はワーレイに「Love Hate Thing」を提供し、ワーレイのミュージック・ビデオにも出演していたけど、それが突然ビッグなヒット曲になった(笑)。テレビでそのビデオを観て「サムだ!」って驚いたね。今では有名人だけど、トラックを送ったら彼も翌日の夜には俺にボーカルを送ってくれた。エラド・ネグロというシンガーは、昔から俺の作品に参加してくれている。彼は俺の『Preparations』や『Interregnums』などの作品にも参加しているし、サヴァス&サヴァラスにも参加している。

――今後の予定は?

ビョークの新作に参加したハクサン・クローク(Haxan Cloak)というプロデューサーとコラボレーションするよ。彼の曲はすごくヘビーでシネマティックで、いい意味でダークだ。彼にあえてダークではない素材を送って、どういう感じになるか楽しみにしている。クエレ・クリスというラッパー兼プロデューサーともコラボレーションしているね。俺の『Everything She Touched Turned Ampexian』とマッドヴィレンを融合させたような作品になると思う。俺のビートと彼のビートを使うんだ。クエレのライムはすごく独特だし、俺が大好きなMCのひとりだね。

Words by Hashim Bharoocha

RELEASE INFORMATION

Prefuse 73『Rivington Não Rio + Forsyth Gardens and Every Color of Darkness』

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