
ザ・ウィンストンズが1969年にリリースした7インチ・シングル「Color Him Father」のB面に収録されていた曲「Amen, Brother」の中盤にあるドラム・ブレイクは、とてつもなく有名であり、最もサンプリングされたブレイクと言えるほど多くの楽曲に使用されてきた。80年代後半のヒップホップを始め、様々なエレクトロニック・ミュージックで広く使われ、ジャングルとドラム&ベースはこの6秒程度のブレイクから発生したジャンルである。
だが、ザ・ウィンストンズのリード・ヴォーカリスト/サックス奏者であり、この楽曲の制作者であるリチャードLスペンサーは、これまでまったくロイヤリティを受け取ってきていない。まだサンプリングに関する現在のような著作権の法律が制定される以前に多数サンプリングされていたことと、出訴期限が過ぎていたため、1996年にこの事実を知った彼はどうすることも出来なかったのだという。
なお、ドラムパートを実際に演奏したドラマー、グレゴリー・コールマンももちろんロイヤリティを受け取っておらず、2006年に他界したときは貧乏でホームレスであった。
2011年、英国のラジオBBC/1XtraがAmenブレイクに関する特集を組み、リチャードLスペンサーにインタビューを敢行。そのインタビューにて、リチャードは自身の楽曲が数々の曲にて無断で使用され、これまで使用料を全く受け取ってこなかったことに対する憤りを露にした。
これを聴いて胸を打たれたマーティン・ウェブスターというUKのDJが、GoFundMeにて募金プロジェクトを始動。Amenブレイクをこれまで使用したことのあるミュージシャンや、サンプリングされた楽曲を楽しんできたファンに寄付を募っており、集まった金額は全額リチャードLスペンサーに渡すと公表している。スタート以降、1週間以内に1万ポンド(訳184万円)以上集まり、大いに話題になっている。こちらから募金が可能。
The Winstons – “Amen, Brother” (ドラムブレイクは1:27)
N.W.A. – “Straight Outta Compton”
2 Live Crew – “Feel Alright Yall”
Super Lover Cee & Casanova Rud – “Girls Act Stupid-aly”
Mantronix – “King of the Beats”