Derrick May × Daizo Murata

September 19,2012 | Category :  News | Tag :  

Derrick May × Daizo Murata

スペシャル・トーク・セッション:デリック・メイ × 村田大造


by Danny Masao Winston

photos by Sadao Ishizuka

 世界各地を巡り、ダンス・ミュージックの過去、現在、未来を伝えるテクノの伝道師デリック・メイ。そして伝説的なクラブ、YELLOWを立ち上げ、現在はAIR、MICROCOSMOS、FRAMES、SOUND MUSEUM VISIONといったクラブ/カフェの経営を行うクラブ・カルチャーのキーパーソン、村田大造。古くから親交の深い両者に、タイトなスケジュールのなか時間を割いてもらい、話を伺った。長年クラブ・シーンを支え続けるふたりが今考えていることとは?

早いもので、SOUND MUSEUM VISIONは11月でオープン1周年を迎えます。それに際してどういう気持ちでしょうか?

 村田大造:自分の子供がやっとヨチヨチ歩きをはじめた、という気持ちだね。クラブは生まれてからも手間暇かかるものだから、本当に子供を育てる感覚に近い。3年間はしっかり愛情を注いで育てれば、いい子に育つ。今はまだ50点、といったところかな。

去年のカウントダウンはデリック・メイ&ジェフ・ミルズという奇跡の組み合わせでした。今年は1周年を記念するVISIONのアニバーサリー・パーティーで、久しぶりに

フランソワKとの共演

です。アニバーサリーはどういう内容になりそうですか?


 デリック・メイ:VISIONのお客さんは若い層が多く、音楽の歴史に興味がある人も多いから、エキサイティングなイベントになるだろうね。大阪や福岡のクラブ事情など、現在の日本のクラブ・カルチャーは危機を迎えているから、我々のような人間が音楽の歴史や、クラブの大切さを人々に伝える必要があると思う。

アニバーサリー・パーティーは11月2日と3日、そして11月9日と10日の4日間に渡って行われますが、デリックとフランソワK以外にはどんなアーティストが出演するのでしょうか?


 村田大造:

2日のイベントは、SHINICHI OSAWA、DJ KAORI、田中知之、VERBAL、DJ KYOKO、DEXPISTOLSといった、日本の第一線で活躍するDJを集めたパーティーで、3日のイベントはエルナン・カタネオがヘッドライナーを務めるハウスとテクノを中心としたイベント。9日のイベントはデイム・ファンクを筆頭にヒップホップ・サウンドを慣らすイベントで、最終日の10日のイベントはHeartbeatの主軸となっているデリック・メイ、フランソワK、DJ EMMAをフィーチャーした、Heartbeatパーティーで締めくくる。今回出演してもらうアーティストはここ1年の間にVISIONのイベントに出てくれた人達で、みんなで集まってVISIONの1歳の誕生日を祝いたいと思ったんだ。みなさんのおかげでここまで来られたわけだから、お客さんやアーティストに何かお返しできたらな、という思いも込めている。どの日も楽しみだね。

11月にデリック率いるTransmatの2枚組コンピレーションが、村田さんのレーベル、Heartbeatからリリースされることになりました。どういう内容になっていますか? 過去のコンピレーション・シリーズとはどう違うのでしょうか?


 デリック・メイ:今回のコンピレーションは、今までどこにも出していなかった未発表音源が多いんだ。25年も前に完成していたのに、世に出さないで保管しておいた曲もある。

それはなぜですか?


 デリック・メイ:色々な理由がある。まだその時はどうするか決めてなくて、アルバムに入れるために取って置いたり、その曲が好きすぎて、むやみに世に出すのではなく発表する時期を待っていたり。でも今がいいタイミングだと思ったんだ。大造とは音楽やクラブ・シーンに対する考え方で理解し合っているし、食べ物とか、デザインとか、生き方など共感できる部分が多いんだ。そういう信頼できる人に俺の音楽を任せようと思った。俺のことも信頼してくれているから、DJで呼ばれたら素晴らしい夜を提供できるよう努めている。

どういうアーティストの楽曲を収録する予定ですか?


 デリック・メイ:まだ選考段階だけど、サン・ソレイユ、アバカス、ザック・クトレツキー、グレッグ・ゴウとか、俺を含めて色々なアーティストを収録するよ。未発表曲や、過去に限定枚数しかリリースしなかったレア曲、そして新曲もある。

Heartbeatでは今までにデリック・メイとフランソワKが2枚ずつミックスCDを出していて、他にもジャイルス・ピーターソン、ティミー・レジスフォード、ベルリンのディクソン、そして日本のDJ EMMAなどのミックスをリリースしてきました。レーベルをプロデュースする村田さんにとって、今のところ満足した結果は残せていますか?


 村田大造:満足しているよ。それぞれのアーティストの良さを引き出せているとも思うしね。僕は彼らが本当にいい作品を作るのをサポートしているだけだ。ただ仕事だからやるのではなくて、ちゃんと心を込めて、一球入魂で作ってくれているのが伝わる作品ばかりだから、満足している。このクオリティを維持しながら続けていきたいと思っている。

 今後はどのような展開を考えていますか?


 村田大造:国外だけじゃなく、国内の素晴らしいアーティストもどんどん紹介していきたいね。これはAIRにもVISIONにも共通することだけど、新しい日本人アーティストを押し出していって、今後のクラブ・シーンの音の方向性を示したり、あるいはそのクラブのカラーとなるようなアーティストをしっかり生み出していかなくてはいけないと思っている。そういう才能を発掘して、クラブだったりレーベルだったりを通して、いい形で世に出していきたいね。

アートワークはデリックがディレクションするそうですね。デリックは様々なアート、家具、インテリアなどにも興味を持っているそうですが、最も影響を受けた芸術家は誰ですか?


 デリック・メイ:最も影響された芸術家か……。誰か特定のアーティストの影響を受けたわけじゃないね。大造はどう?

 村田大造:うーん、ピカソ。
 

 デリック・メイ:ああ、それで言ったら俺はサルバドール・ダリだな。

 村田大造:うんうん。ピカソとダリ。

 デリック・メイ:非常にクールでイカれてるね。

建築家で言うと?


 デリック・メイ:(即答で)フィリップ・スタルク。あと、あの人は誰だっけ……デトロイトのハートプラザを設計した日本の建築家。ワールドトレードセンターも設計した人だ。知らない?

すみません、勉強不足です。


 デリック・メイ:ミノル・ヤマサキだ。ワールドトレードセンターの建築家は日本人なんだ(註:正しくは日系アメリカ人)。

ファッション・デザイナーで言うと?


 デリック・メイ:それは簡単だ。この人だよ。(靴を見せながら)アルフレッド・バニスターだ。デザイナーの名前は何だっけ?

 村田大造:金子だね。シューズ・デザイナーの金子真。

 デリック・メイ:彼のお気に入りのデザイナーでもあるんだ。

デリックは去年から現在まで、どういう場所でプレイしてきたのでしょうか?


 デリック・メイ:パリ、ロンドン、チューリッヒ、ジュネーヴ……様々な場所に行って来た。今夜はこれから中国に行くんだ。

現在のヨーロッパの金融事情、中国などのアジアのパワー、イスラエルやアフリカなどの情勢、アメリカの経済状況など、そういった社会的なバランスがクラブ・シーンの動向を左右すると思いますか?


 デリック・メイ:昔は経済や社会情勢などは、あまりクラブ・シーンとは関係なかったと思う。人々はハッピーになりたいからパーティーに行っていたし、現実が厳しければ余計クラブに出向いていた。不景気でもね。でも今は、お金がないことを理由にクラブに行かない人が増えてしまったように思う。それと、最近はフェスティバルが多すぎる。大型のフェスのためにお金を確保しておこうとするから、他のイベントにはあまり行かなくなってしまうんだ。フェスのせいで経営が厳しくなっているクラブもあるね。

イビザ、バルセロナ、ベルリンなど、ダンス・ミュージックの聖地のクラブ・シーンはどういう状況下にありますか?


 デリック・メイ:商業的になりすぎているね。みんな、イビザに行くためのチケットを6ヵ月も前から買っていたりするんだ。ヤンキース・ファンが、ヤンキース戦を観るためだけにチケットを買って野球場に出向くのと同じような状況だね。ただのビジネスになってしまった。

では、デトロイトはいかがですか?


 デリック・メイ:デトロイトにはもともと、クラブ・シーンと呼べるほどのものはないんだ。昔から音楽シーンはあったけど、クラブ寄りじゃなかった。素晴らしいミュージック・シーンはあってもいいクラブ・シーンはない、ということだ。その違いは大きい。そして、それはどんどん縮小している。デトロイト出身のアーティストは、ベルリンとか、他の場所に移ってしまうんだ。アーティストにとってデトロイトという街は、あまりチャンスを掴める場所ではないというのが現状だね。

村田さんは震災から約半年後にVISIONをオープンさせたわけですが、そこに使命感や、シーンに対する責任感などはあったのでしょうか?


 村田大造:震災の前から、すでにリーマン・ショックで日本の経済、世界の経済が大打撃を受けていて、少し落ち着いてきたかなって思っていた矢先の震災だったから、日本はだいぶ厳しい状況に追いやられたよね。でもみんなが下向きになって、東京が東京らしくなくなってしまうと、悪いスパイラルに陥ってしまって、日本全体に良くないと思った。どうにかしないといけないという使命感はあったね。東京が死んでしまうと、今まで自分達が作り上げてきたクラブ・シーンが衰退してしまう。だから、みんなができること、やらなくてはいけないことをやるべきだと感じた。僕はクラブという空間を作るのが仕事だから、やれることをやったわけで。あのタイミングで始めるのはリスクがあったけど、リスクを背負ってでもみんなが前に進んでいかなくてはいけないと思ったんだ。色々言われたよ、「馬鹿じゃないか?」とか「クレイジーだ」とかね(笑)。でも僕は東京が好きだから、東京を良くするために、一か八か賭けてみたいと思ったんだ。

VISIONをどういうクラブに成長させたいですか?


 村田大造:VISIONができるまでは、あの大きさのハコはここ数年できていなかった。DJはあちこちのクラブを回って、同じようなパーティーで同じようなことをしていた。それを何年もやっていれば、ある程度やり尽くしてしまうよね。国内外から色々なDJを呼んだりするけど、やってることは変わらなくて、刺激がない。クラブではDJが音楽をかけて、たまにVJもいるかもしれないけど、基本的にはそれだけ。でも、音楽ってファッションやダンスなどとも有機的に絡んで、もっと立体的に提示されるべきものだと思うんだ。音だけじゃなくて、パフォーマンスとか、ファッションの要素があるような空間を作ることで、新しい音楽性を押し出したり、過去の音楽をリアルタイムで体験していない世代に説得力のある形で見せていったりできる。ただDJがレゲエやヒップホップを聴かせたりするだけでは、音楽の本来の良さが伝わりにくいと思うんだよね。色々な音楽が融合して今の音楽があるわけだから、それをパソコンのスピーカーでなんとなく聴くのではなく、様々な音楽をクラブで体感して欲しいと思って、SOUND MUSEUMと名づけたんだ。今はダンス・シーンも大きくなっているし、ライブのシーンやファッションのシーンもあって、クラブという狭いシーン以外で活動している人達もいれることで、クラブ・シーンの活性化に繋がると考えている。そうやって試行錯誤を繰り返して、ひとつひとつイベントをやって、クラブのカラーができてきて、盛り上がってくれたら嬉しいなと思ってるよ。

古い音楽を今の世代に伝えるという姿勢は、ワックス・ポエティックスにも共通すると思います。


 村田大造:そうだね。音を聴くだけでなく、長いこと活動しているアーティストの生の声を届けるのもすごく大事なことだと思う。インタビューなどを通して新しい発見があったり、考え方が変わったり、知識がついたら聴き方も変わるからね。こういう専門誌は必要だと思う。特に今はなくなってきているから。何でもデジタルになってしまって、いつでもどこでも音楽に触れることができるのは素晴らしいけど、その代わり音楽に対する感じ方とか知識がちょっと浅いのかなって思うことがあるね。

デリックは震災直後に来日し、真っ先に日本を元気づけてくれました。台風があろうと何があろうと来日し、クラブでのDJプレイに限らず、クラブに行けないファンのためにもミックスCDのリリースを行い、Ustreamの番組に出演し、大きなフェスティバルだけでなく地方公演にも積極的に出て、日本のために尽くしてくれています。本当に感謝すべき行為だと思います。震災から1年以上が経ちましたが、デリックから見て、日本の何かが変わってきた印象はありますか?


 デリック・メイ:東京が静かになったね。東京の騒がしさが減ったし、音楽も減ってしまった気がする。渋谷は確実に静かになったね。銀座や代官山はあまり変わってないけど、渋谷はすごく変わった。

初めて来日した時と比べると、日本はどのように変わりましたか?


 デリック・メイ:そうだね……“女性の進化”とでも言おうか。日本人女性は変わったと思う。昔と比べて、仕事をしている人が増えて、ビジネス界や社会で非常に重要な役割を果たしている女性が増えた。カフェやバーにひとりで来て、自分のクレジットカードを持ってる、独立した女性を前より見かけるね。クラブでも、女性の恰好に自信、自立心、強さなどを感じるんだ。そして、その新しい世代の日本人女性こそが、日本の未来を支えていると思う。昔の日本は年老いた男の社会だった。国としては安定していたけど、お金は全て年を取った男達に持っていかれていた。

現在の日本のクラブ・シーンに関してはどう思いますか?


 デリック・メイ:現在は危機に陥っている。非常に危ないね。クラブの営業時間を短くしないといけなかったり、色々な圧力をかけられて身動きがとれない人も多い。シーンにとって非常に良くない状況になりつつある。今後どうなるのか想像もできないよ。坂本龍一も取り組んでいる問題だね。クラブ・シーンは、あらゆる音楽ジャンルに影響を及ぼすんだ。なぜなら、これは音楽の発展の場だけじゃなく、若者の成長の場でもあるから。表現力やクリエイティヴィティを育む場所なんだ。そして、音楽に触れるだけではなく、人々が集まって、コミュニケーションをとって、繋がりを持つ場所でもある。このカルチャーが衰退する代償は大きいよ。

 村田大造:ある意味で、クラブのスタッフひとりひとりがアーティストであるべきだと思っている。イベントが上手くいかなくても「このアーティストの人気がないんだな」とか、「オーガナイザーに力がないからあまり呼べなかったんだ」とか、アーティストやオーガナイザーのせいにしないで、自分達が来てくれたお客さんを楽しませて、心を掴むという作業をしなくてはいけないと思う。あと、商業化されてイベント箱になってしまって、大物がくれば人は入るけど、そうじゃない時は人が来ない、っていう状態になっているのが現状だね。昔は有名な人が来ていなくてもクラブには顧客がいたし、客からしてもそこに行けば誰か友達がいるっていう状況だった。今はアーティストに頼りすぎていて、イベントごとに客層もクラブの顔も変わる。そういう状況だから、より大きなアーティストが出るフェスとかに人が流れてしまっているんだ。そういう現状を変えていくのが目標だね。CDやレコードやMP3で聴いてる音楽をクラブで、大きな音で聴くことにもまた違った良さがある。それにVISIONのように、複数の音が同時にかかっている空間には、普段なら聴かないものに触れるチャンスもある。だから普段あまりクラブに行かない人も、是非イベントに足を運んでくれたら嬉しいね。


SOUND MUSEUM VISION 1st ANNIVERSARY

-4DAYS-

11/2 (FRI) -DAY1-

SHINICHI OSAWA, TOMOYUKI TANAKA, VERBAL, DJ KAORI
THE LOWBROWS, YUMMY and more 

11/3 (SAT) -DAY2-

HERNAN CATTANEO, HIROSHI WATANABE a.k.a. KAITO, NICK & YOPPY, KAORU INOUE, FORCE OF NATURE, DJ KENSEI and more 

11/9 (FRI) -DAY3-

STONES THROW PRESENTS DâM-FunK JAPAN TOUR 2012 

DâM-FunK, ZEN LA ROCK × JOY’N HAMMER × NK-SUNSHINE, MURO, DJ WATARAI, MR.BEATS a.k.a. DJ CELORY and more

11/10 (FRI) -DAY4-

COSMIC TWINS (FRANCOIS.K. & DERRICK MAY), DJ EMMA, 須永辰緒, GONNO and more 


AIR 11th ANNIVERSARY

-2DAYS- 

11回目のアニバーサリーパーティ。それは、昨年10周年の集大成を迎えたAIRにとっては過去のヒストリーを振り返るのではなく、また新しい未来へ踏み出す特別な記念日である。絶え間なく変化するシーンの中で、アンダーグラウンドミュージックの核となるスピリットと震えるような感動を護り、受け継いでいくために。祝祭の2デイズ、AIRを幾度も興奮に包み込んできた、東京を代表するトップアーティストたちが集結する。すべてのアーティストとオーディエンスのエネルギーが、一体となって爆発する二つの夜。いま、未知の熱狂が幕を開けようとしている。

09/28 (FRI) -DAY1-

OFF THE ROCKER, ☆TAKU TAKAHASHI, 中田ヤスタカ,
DEXPISTOLS, RYOTA NOZAKI, THE LOWBROWS, DJ KYOKO and more 

9/29 (SAT) -DAY2-

TAKKYU ISHINO, KEN ISHII, DJ WADA, KO KIMURA,
KAORU INOUE, SHOTARO MAEDA, DJ ENDO and more 

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