Funk Archaeology No.6

August 09,2011 | Category :  News | Tag :  

Wax Poetics Japan No.10から始まったNow Againのイーゴンによる新連載“Funk
Archaeology”。連載6回目となるビースティ・ボーイズ表紙のNo.15では、70年代ターキッシュ・ロックに関しての記事となっている。原稿と合わせて届いた音源を本サイト「online exclusive」にて読者に公開する。

70年代ターキッシュ・ロックの秘宝

 トルコのファンキーなサイケデリック・ロックやプログレッシヴ・ロックは、聴き込むほどに好きになった。その出会いは、ニューヨークのあるレコード店の地下。トルコのテレビ番組用のライブラリー・レコードを掘り当てた時だ。「これは売りものじゃないからね」と店のオーナーが笑いながら流してくれたその音楽は、私が人生で聴いた中で最も熱烈なジャズ・ロックだった(後にそのレコードのレーベル面に記載されていたネイサン・デイヴィスという名前の彼が、ピッツバーグ出身のサックス奏者だということを知った)。

 その次に私が出会ったのは、Jディラがサンプリングしていたトルコのジャム・ロック・シーンの雄、モゴラーだ。だが最も印象に残っているのは、バルシュ・マンチョのドーナッツ盤「Gonul Dagi」を手にした瞬間である。大きなヒゲをたくわえた彼のレコードには、漆黒のファンキーなグルーヴが詰め込まれていた。その刺激的な、疾走するようなサウンドには、70年代中頃のデヴィッド・アクセルロッドの音楽に通じるものがあった。アナトリア地方からイスタンブールへと、何百年の時を越えて流れてきたそのメロディーは、家でシンセサイザーで演奏するのにもピッタリである。マンチョのまずまずのテナーは、フレンチ・アイコンのセルジュ・ゲンスブールと比べることもできるだろう。そのジャケットに写るトルコ人のアンサンブルは、まさしく豪華絢爛である。

 崖っぷちに立たされ、飛び降りるか、それとも大人しく引き下がるかのどちらかを迫られているような気分だが、ここは1つ、マンチョのディスコグラフィーに飛び込んでみよう。40年間にも及ぶマンチョの作品を求めて、トルコのアンカラまでの航空券を予約するレコード・コレクターも少なくない。彼らはトルコのサイケ作品の中でも天然記念物のような『Dünden Bugüne』などのレア盤を探しているのだ。アーキン・コーレイ、エディップ・アクベイラム、オズデミル・エルドガン、セム・カラサ、エルセン・ディンレティンらと一緒に70年代のターキッシュ・ロックの革命児になったマンチョだが、実際にリリースされた作品はあまり多くなく、当時は評価されることも少なかった。以下は彼のキャリアの中でもサイケデリックやプログレッシヴ色の濃い、70年代初めから中盤にかけての作品を集めたものであり、どの作品でも彼の才能を存分に味わうことができる。  

Bariş Manço and Moğollar
“Iste Hendek Iste Deve” (Sayan) date unknown


 マンチョがモゴラーと共にSayanに残した2枚の7インチの1つ。マンチョがSayanからYavuz Plakに移った1971年にリリースされたコンピ作『Dünden Bugüne』に収録されている。この曲ではモゴラーのキーボーディスト、ミュラ・セスのトレードマークであるハモンド・オルガンの音を聴くことはできないが、カヒット・ベルケイが弾くギターの悲しいリフレインや、エンジン・ヨルコグルーの轟くドラム・グルーヴからは、間違いなくモゴラーの影響を感じることができる。マンチョのキャリアにおける、いわゆる“マンチョモンゴル期”の代表作である。

Sevil and Ayla
“Bebek” (Coskun) date unknown


 忘れもしない。この曲と出会ったのは、2007年2月の初めだった。Stones Throwのオフィスでギルティー・シンプソンと、エミネムやドクター・ドレーのプロデューサーであるデノン・ポーターと話をしていると、オフィス・マネージャーが笑顔で私に小包を渡してくれた。「これはイスタンブールからだよ。ヘビーなヤツだ」。私は早く聴かせてくれと言って、すぐに小包を破いた。そしてCoskunという小さなレーベルから発売された、マンチョ・プロダクションのレコードをターンテーブルの上に置いた。まず耳に飛び込んできたのは、レッド・ツェッペリン「Whole Lotta Love」を思い出させるオルガン・リフ。それが数分ほど続いたと思えば、吠えるようなドラム、パーカッシヴなバイオリン、重たいベースが、セヴィルとアイラの優しいコーラスと共に花開いたのである。「スゲエな」という声の後にデノン・ポーターは「こんなもの、どこで手に入るんだ?」という月並みの質問をしてきた。もちろんCD-Rに焼いて渡した。あとはドクター・ドレーの待望の新作『Detox』のプロデューサーであるデノンが、このマンチョの曲をいかに料理するかを待つだけである。

Bariş Manço and the Kurtalan Ekspres
“Gonul Dagi” (Yavuz Plak) date unknown

 マンチョと、オズカン・ウグル、オハンズ・ケメル、ナル・モーレイ、セラル・グヴェンで構成されるカータラン・エクスプレスの初期コラボ・シングル。モゴラーのドラマーであるヨルコグルーが参加し、さらにキーボーディストのセスがMoogのシンセを操っている。サズ(オスマン帝国時代の弦楽器)の名手たちと、作曲家ネセット・アルタスが生んだこの曲の出来は言うまでもないだろう。最高である。マンチョは後にYavuz Plakのコンピ『Sakla Samani Gelir Zamani』にこの曲を収録し、同じように素晴らしいシングル曲「Olum Allahin Emri」と共に同コンピに輝きを与えている。

Esin Afşar
“Sandiğimi Açamadim” (Yavuz Plak) date unknown


 この曲では、シンガーであり、ソングライターであり、また、女優でもあるエーシン・アフサルがマンチョのスター性を証明する形となった。Yavuz Plakのディスコグラフィーを見ると「Gonul Dagi」のすぐ後の作品であることが分かる。マンチョとカータラン・エクスプレスの影響は明らかであり、ヘビーなドラムと、断続的で低いベースライン、たまに聴こえるストリングスと木管楽器が、アフサルの歌声を際立たせている。

Bariş Manço and the Kurtalan Ekspres
“Kol Basti!” (Yavuz Plak) date unknown

 デヴィッド・アクセルロッドには『Songs of Innocence』があり、セルジュ・ゲンスブールには『Histoire de Melody Nelson』があるように、マンチョには『2023』がある。もしかしたらマンチョは、Capitol Recordsのプロデューサーであるデヴィッド・アクセルロッドのその作品や、フランス人であるゲンスブールのそのマスターピースに出会っていなかったかもしれない。しかし一度、Yavuz Plakに残された1作目にして最もまとまりがある同作を聴くと、マンチョがどれだけそれらの名盤に制作意欲を掻き立てられたのかが分かる。この作品が大衆に受け入れられるものではないことは、最初から分かっていたように感じるが、カータラン・エクスプレスをバックに従え、ドラム・マシーン、Korgのシンセ、ダブルネック・ギターを使用したこのダークで未来的なアルバムを生み出してくれた彼に、私たちは感謝しないといけない。『2023』の最後に収録されている「Kol Basti!」は、ターキッシュ・プログレッシヴ・ロックの最高峰に君臨している。

イーゴンはNow Again主宰、Stones ThrowのA&Rであり、レーベル随一を誇るレア・ファンク、ソウル・コレクター。
www.nowagainrecords.com

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