JOINT WITH THE SUN

June 20,2012 | Category :  News | Tag :  

Bennetrhodes

メロディーの共有

by Mitsuru Ogawa

 Bennetrhodesは、2011年にソロ・アルバム『Fantastic Farewell』を発表し、新世代のピアニスト兼ビートメイカーとして一躍注目を集めたKan Sano(佐野観)による新ユニットである。アメリカのバークレー音楽大学でジャズを学び、モントレー・ジャズ・フェスティヴァルなどにも出演した彼は、帰国後、ジャンルを問わずさまざまなアーティストのバックを務めるかたわら、mabanua、sauce81、RLP、Monkey Sequence、Daisuke Tanabe、Marterなど、同世代のミュージシャン/ビート・クリエイターと積極的にセッションして、演奏のみならずトラック制作のスキルも磨いていった。ほかにも、ライフワーク的なソロ・ピアノ・コンサートを開催したり、ギタリストの石川征樹との即興的なデュオや、ジャム・バンド・トリオのMovementなど、ジャンルにとらわれない幅広い活動を見せている。そんなKan Sanoに、彼が音楽の道に進むようになった経緯や、6月6日に発売されるBennetrhodesのファースト・アルバム『Sun Ya』についてなどを、存分に語ってもらった。

音楽との出会いは?

 小学校5、6年の頃にビートルズを聴いて、それでギターとピアノを始めました。ギターの弾き語りをしながら、曲も自分で作るようになっていったんです。小、中学校時代に、自作曲をラジカセに録音したりしてましたね。(石川県)金沢の高校に入ってからバンドを始めて、大学生のサークルにも参加して演奏していました。本格的にピアノをやって、ジャズを聴いたり演奏するようになったりしたのもその頃で、高校1年の時にはすでにバークレーに行くって決めてましたね。月1回のソロ・ピアノ・コンサートを始めたのも高校時代で、不定期ですけど今も続けています。

その頃はどんな音楽を演奏していましたか?

 90年代後半の当時はジャム・バンド系が流行っていたんです。メデスキー・マーティン&ウッドとかソウライヴとか、そういったものをやりつつ、スティーヴィー・ワンダー、ダニー・ハザウェイ、カーティス・メイフィールドなど、ソウルのコピーをやったりしていました。そういう古いソウルも好きでしたけど、ディアンジェロとかエリカ・バドゥとかのネオ・ソウルもよく聴いてましたね。ジャズで大きな影響を受けたのは、マイルス・デイヴィス、キース・ジャレット、ハービー・ハンコックあたり。ピアニストで言うと、アーマッド・ジャマルも好きですね。その頃に聴いたり、影響を受けたりした音楽が僕のベースになっていて、それは今も変わっていません。


そして、念願が叶い、バークレー音楽大学に留学します。多くの著名ミュージシャンを輩出する名門で、特にジャズの世界で活躍する卒業生が多いですね。秋吉敏子さんや渡辺貞夫さんを筆頭に、日本人ジャズ・ミュージシャンにも数多く卒業生がいます。
 
 一般的にはジャズが有名な大学で、ジャズのハーモニーやアンサンブルを教えるといった講義が多いですが、学びにくるミュージシャンはいろいろなタイプやジャンルの音楽をやっていて、ゴスペルをやってる人もいれば、ヒップホップをやってる人もいました。いろいろな日本人もいて、cro-magnonのメンバーやSOIL&“PIMP”SESSIONSの元晴さんは僕の先輩にあたります。実際に僕がいた時には、上原ひろみさんも在籍してましたね。エスペランサもいて、彼女たちはもうすでにその頃から有名でしたよ。僕のピアノの先生は、上原ひろみさんやキース・ジャレットとかを教えていた方です。でも、周りに上手い人がいっぱいいたから、僕も衝撃を受けて、1、2年の頃は毎日のように練習室にこもって特訓していました。学校のセッション・ルームは自由に使えるので、夜になると音楽仲間が集まり、よくジャム・セッションしてましたね。

トラック制作をするようになったのはいつ頃ですか?

 帰国して、東京に出て来た2006年頃です。バンドでやるのもいいけど、1人で全部やりたいなとも思っていて。小、中学生の頃もラジカセを使って多重録音の真似をして遊んでいたから、その延長みたいなものだと思います。楽器と同様、独学で始めましたが、フライング・ロータスに代表されるビート・シーンが大きくなってきた頃で、そういう影響も受けましたね。特にドリアン・コンセプトにシンパシーを覚えて、それは彼が楽器も演奏するミュージシャンだから、ということもあると思います。僕は自分のことを、まずはミュージシャンだと考えています。日本にも周囲にはすごいビートメイカーがたくさんいて、単にビートを作るだけでは太刀打ちできない。だから、そういう人たちとの違いを出すにはどうすればいいか、ということで、自分の得意なことをやろうと考えました。作曲もビートを組んで行うのではなく、まず鍵盤で弾いて、全体をイメージしてから始めています。散歩の途中で何かイメージが降ってくることがあるんですけど、そんな時はすぐに家に帰って忘れないようにピアノで弾いてみたり。多くのヒップホップ系のプロデューサーとは違い、サンプラーを使ってビートを組む、というやり方は、あまり僕は考えなかった。一度使ってみたけど、自分のスタイルには馴染まなかったですね。

その頃から、いろいろな仲間とセッションもするようになりました。

 渋谷周辺のクラブによく顔を出すようになり、そこで知り合った人たちとセッションをするようになりました。mabanuaをはじめ、origami PRODUCTIONSの面々とか。いろいろなタイプのミュージシャンのサポートをしてきたけど、トラック制作をするようになってから自分が作りたい音楽の方向性もはっきりしてきて、それからは自分の制作活動に集中できる時間を増やしていきました。セッションも同じで、音楽的嗜好や気が合う人たちと一緒にやる機会が自然と増えていきましたね。今度もmabanuaと九州をツアーする予定があるし。

いろいろなコンピレーションに楽曲を提供し、そして初のアルバム『Fantastic Farewell』を2011年に発表します。

 デモ曲がいろいろ溜まり、それをCIRCULATIONS(の担当者)に聴いてもらい、リリースすることになりました。最終的には新しく作った楽曲が増えましたが、クラブのフロアを意識するのではなく、家でじっくり聴けるアルバムにしよう、ということを念頭に置きましたね。それまでいろいろ試行錯誤してきたけど、改めて自分のやりたいことや方向性を見つめ直し、その結果生まれたのが『Fantastic Farewell』です。自分の出したいものが出せたし、あのアルバムによって、Kan Sanoとしてようやくスタート地点に立てたとも思います。

Bennetrhodesの『Sun Ya』は、Kan Sanoが作る2枚目のフル・アルバムですが、このユニット名は何を意味するのでしょうか?

 今後もKan Sanoとしての活動は続けるけど、今回のは新レーベルから出すものだし、それで新しいユニット名をつけました。Bennetrhodesの“rhodes”はフェンダー・ローズからきていますが、全体的に特に意味はなく、ただ響きのいい言葉を組み合わせたものです。でも、「人と人を繋ぐ」とか「共有する」といったイメージはありますね。今までずっと1人で音楽を作ってきたけど、ファースト・アルバム制作後に震災があって、それから人と人との繋がりをより意識するようになりました。今回のも、実際には僕1人で作ったアルバムですけど、意識的には違います。アルバム・タイトルの『Sun Ya』は、繋げるとサンスクリット語でスーニャとなり、それはゼロとかスタートといった意味合いです。あと、ロイ・エアーズの「Love from the Sun」とか、僕が好きな曲には“Sun”という言葉が入ってることが多くて、それで入れました。

もちろん『Fantastic Farewell』に通じるところもありますが、新作にはそれとは違う世界観があります。ビートがよりシンプルになっていて、アブストラクトなムードではなく、「Sketch of a Dream」や「Over」のように、ポップで温かみのあるイメージの曲もあります。「Joyful Spring」や「Electrified Feeling」のように、ファンキーさやメロウさがより明確になっていて、リスナーに対してわかりやすさを打ち出した印象ですね。

 震災の影響があったからでしょうけど、前向きな気持ちになれるような曲が自然と増えていったと思います。多くの人と共有できる音楽ということで、そういうわかりやすさを意識したところもありますね。僕の曲の場合、キーボードにしてもコーラスにしても、たくさんのトラックを使って重ねて、それを加工して作っているんです。制作過程は結構複雑ですけど、だから逆にビートはシンプルにしていますね。メロディやハーモニーに、より重点を置いた結果とも言えるし。

ヴォコーダー調のボーカルが入った「Body Electric」とか、ヘッド・ハンターズ風とも言える「Wake Up Sauce」などは、ハービー・ハンコックの影響を感じさせる曲ですね。一方で「Svara」や「Ameeta」など、キーボード、シンセ、コーラスを重ね合わせたコズミックで浮遊感のあるアレンジは、ミゼル兄弟のSky Highからの影響かな、とも感じます。

 ヘッド・ハンターズもすごく好きだし、そういう影響は自然と出ますね。Sky Highの奥行きのある音の質感もいいですよね。僕はレコードからのサンプリングはしませんが、でもそういう質感や空気を出したいとは思っていて、制作する時は、例えばピアノの音ひとつにしても、いろいろ加工しています。ローズも4つ、5つ重ねて厚みを出したり。「Mindmap」という曲は、カーティス・メイフィールドがプロデュースしたステイプル・シンガーズの「Let’s Do It Again」の質感が欲しいなと思ってやったものです。Bennetrhodesもアルバムを作って終わりではなく、ライブをやったりして、観客と共有できるプロジェクトにしていきたいなと思います。今後は僕単独ではなく、シンガーやミュージシャンを入れて曲を作ったり、“共有すること”をよりイメージできる活動がしたいですね。

Bennetrhodes『Sun Ya』

2012.6.6 Release 

Grunt Style

GSCD-7801

¥2,100 (Tax In)

JAN : 4580211851043

waxpoetics.jp store

iTunes

www.amazon.co.jp

01. Joyful Spring

02. Electrified Feeling

03. Ameeta

04. Tenderness

05. Mind Map

06. Body Electric

07. Share in Love

08. Modern Times

09. Sketch of a Dream

10. Wake Up Sauce

11. Svara

12. Steppin’

13. Over

14. New Life

15. Open You Inner Eye

Share this Article
Facebookでシェア
Twitterでシェア
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>