Master Craftsmanship by Maker’s Mark

July 15,2014 | Category :  News | Tag :  

Yasuhiro Endo

こだわりの和製笛

by Danny Masao Winston photos by Suzu (fresco)

 日本に古くから伝わる楽器でありながら、学校で学ぶ事も、普段耳にする機会も現代にはあまり無く、「竹でできている笛」という程度にしか認識していない日本人も多いことだろう。しかし日本の伝統の数多くがそうであるように、尺八という楽器はとてつもなく奥が深い。

 一尺八寸(約54.5cm)が標準の長さであるためにこの名称で呼ばれるようになった尺八は、江戸時代に、仏教の禅宗の1つである普化宗の虚無僧(こむそう)と呼ばれる僧侶達が、演奏をしながら全国を旅したことで、広く知れ渡った。普化宗ではお経を唱える代わりに法器である尺八を吹くことを修行とし、虚無僧は民家の前で尺八を演奏し、お布施をもらっていたと言われている。編み籠を被り、尺八を演奏しながら日本中を行脚するその風貌はミステリアスであり、彼らにとっての“武器”であった尺八も同様に神秘的だ。

 東京都練馬区にある創業大正元年の遠藤晏弘尺八工房では、伝統的な制作方法を守りながら、全ての材料に自然の素材を使って丁寧に1本1本尺八を制作している。これは、最高品質の原料にこだわり、1本1本のボトルに時間をかけて手作りしているハンドメイド・バーボンMaker’s Markの信念に重なる。この拘りの理由を紐解くため、我々は今回遠藤晏弘尺八工房にお邪魔し、三代目の遠藤晏弘に話をきいた。


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尺八を製造するための道具



 まずは尺八との出会いを教えて下さい。

 家で父が作っていたので、それが出会いですね。子供のころ尺八を楽器としてあまり認識していませんでした。父は尺八をよく吹いていたのですが、音より制作している方が印象的でした。尺八を意識するようになったのは中学時代からですね。実際に吹くようになったのは、その後なんです。父に子供のころ吹き方を教わったのは、ただ口にあてがって吹いてみろと言われました。その後、尺八を作る仕事に携わるようになって、吹き方を研究しました。尺八は吹くのが難しいっていうイメージが強いので、どうやったら簡単に吹けるようになるか色々と試行錯誤してきました。本格的に尺八作りを始めたのは23歳の時です。

息の強弱や指の使い方で色々な音が出せるんです。

西洋の楽器は音が単純ですけども、尺八の音は凄く複雑なんです。

西洋の吹奏楽器にはない尺八の魅力とは何でしょう?

 やっぱり音じゃないですかね。尺八は穴が5孔しか無いんですが、息の強弱や指の使い方で色々な音が出せるんです。西洋の楽器は音が単純ですけども、尺八の音は凄く複雑なんです。5孔しかないのはある意味不自由ですが、不自由な所を良い部分に変えることができるというか。江戸時代に開発された技法が現在まで継承されてきているので、奥が深いですね。

初代や2代目がどういった方だったのか、そしてどういう功績を残したのか教えて下さい。

 大正時代の話ですけど、初代は始めたのが遅かったらしいですね。たまたま近所に尺八を作る人がいたらしくて。役所に勤めていたんですけど、子供が多くて生活が苦しかったそうで。手先が器用だったので、その近所の人に「遠藤さんやってみないか?」って言われて、その人に教わったんです。その当時教わった技術はその時代にしては革新的だったらしいです。祖父は道具を考えたりだとか、独自の作り方を編み出して、それは今でも残っています。自然の物を扱ってるわけですから、形状もそれぞれ違います。それをいかに上手く扱って作るか、というところを突き詰めたんです。2代目の時は、戦争があったので強制疎開で色んなものがなくなっちゃったんですね。多少道具は残っていたんですが、一から始めなくてはいけなくて。戦争の後に色々と立ち上げるときに苦労したみたいです。



尺八の素材の竹

代々伝わる尺八の制作方法を説明していただけますか?

 材料の竹は掘ってる人から買うんです。“油抜き”という工程があるんですが、緑色の竹を火にあぶると、薄いグリーンになるんです。それを干すと白くなり、長持ちする竹材になるんです。それをやらないと駄目になってしまう。そういう竹を買ってきて、それをまた3年から5年寝かせます。竹は採った時には水分を含んでますから、それがある程度飛んで、状態が安定したところで作るわけです。自然のものなので曲がっているんですが、その竹を火であぶって曲がりを直して、それから根を切って、形を整えます。そして真ん中で切って、例えば一尺八寸の尺八なら一尺八寸の長さになるよう調整するんです。そして切り口にもっと細い真竹を入れて、繋ぎ口を作ります。中を削って、 下地を入れていくんですが、その形状によって音が変わります。竹を半分にすることで、中が塗りやすくなります。この下地をつける作業が難しいんですが、何回も何回も調整して、形を決めて、最後に漆で仕上げていきます。

漆を塗らない職人さんもいる中、遠藤さんは漆を塗るという伝統を守ってらっしゃるそうですが、その信念も含め、素材の選別などにおける遠藤さんのルールやこだわりを教えて下さい。

 ルール、というほどのことではないんですが、単純に、漆が一番優れてるものだと思うんですよ。尺八を吹いてると段々音が良くなります。プラスチックだとか人工物でできたものは、ほとんど音が変わらないですよね。自然のものを使うことで音がどんどん良くなっていくんですよ。プロの方はほとんど古い竹を使ってます。出来てから相当年数が経ってるような、相当吹き込んで良くなった尺八を使います。素材の選別のこだわりとしては、竹が自然のものなので、なるべく自然のものを使いたいですね。自然のものに勝るものは無いと思います。

遠藤晏弘尺八工房で作られる尺八には、翔、調、玄、楽、虚、庵などの種類が用意されてあり、それぞれ違った音色が楽しめるそうですが、この音の違いはどのようにして生まれるのでしょうか?

 管内の形状で変わります。内径を20ミリだとか15ミリだとか、サイズをいくらでも変えることができるんですよね。それによって音色が変わってきます。音が柔らかいタイプとか、鋭いタイプなどを作ることができます。



独特な記号で記載された尺八の楽譜

尺八は虚無僧の使う楽器として古くから伝わるものですが、尺八の歴史を知らない方でもわかるように、歴史を簡単に説明して頂けるでしょうか。

 情報があまり残ってないんですけどね。今の形になったのは鎌倉時代から江戸時代ではないかと言われてます。聖徳太子の時代にも似たような物がすでにあって、大陸から伝わってきたとされています。その頃のはもっと短くて6孔ありました。そもそも縦笛は世界中に古くからあるんですが、なぜ日本の尺八がこういったものになったのかは解らないみたいです。江戸時代の虚無僧は法器として尺八を演奏して、全国を行脚したので、それで各地に尺八が広まったのではないですかね。虚無僧はただの僧侶ではなく、武士だったのではないかとも言われてます。戦国時代が終わってから仕事にあぶれた武士が、お経を唱えなくても良い虚無僧になって、お金をもらっていたのではという説があるんです。

現在では虚無僧はいなくなりましたが、その大きな理由はなんでしょうか?

 明治に入って、普化宗は政府によって潰されたんですね。危険分子というか、政府にとって脅威だったんじゃないですかね。虚無僧の曲や演奏法は伝承されてきたんですが、しばらく下火になっていて。最近になって吹く方が全国に増えてきたと思います。虚無僧の曲には尺八の持ち味が現れていると思いますね。外国の人はそういう方面をやりたがる人が多いです。



明治以降、アメリカの文化が入って来て
日本の伝統的な文化が廃れて行ったからでしょうね。

西洋の楽器より吹くことが難しいと思われがちなんですけど、
そんなことないんです。

 尺八という楽器は現代の日本人が日常的に慣れ親しんでいる楽器とは言えませんが、それは何故だとお考えですか?

 明治以降、アメリカの文化が入って来て日本の伝統的な文化が廃れて行ったからでしょうね。西洋の楽器より吹くことが難しいと思われがちなんですけど、そんなことないんです。でも、尺八の教え方が上手く無かったというか、上手く伝えて来れなかったのかなと思いますね。あと、尺八の歌口の形が1本1本違うので、あごに当てた時に凹んだ部分と口の距離が合えば、誰でも吹くことができるんですが、そこを高く作ってる人もいれば、低く作ってる人もいるので。個人個人に合わせると吹きやすくなりますが、そういった楽器を例えば学校で生徒全員に配るようなことは中々出来ないですからね。



完成した尺八


尺八は侍の心を引き継ぐ嗜みであるといった考え方もあるようです。

 吹き方や姿勢、呼吸法といった所にそういうものがあるのかもしれないですね。しかし実際問題、現在そういった感覚で吹いてる人は少ないように思います。稽古に行くと1時間は正座しなくてはいけないですが、現代では正座ができる人も減ってますからね。

もっと広く色々な人に演奏してもらいたいとお考えですか?

 そうですね。良い面がなかなか伝わっていないかなと思います。尺八を吹くことで呼吸法を学べるし、指を動かすわけですから、健康的な楽器だと思います。1人でも楽しめるし、合奏もできる。自分の息で音量がコントロールできるので煩くない楽器ですし。コントロールが難しいんですけどね。最近はでも、尺八が西洋の楽器っぽくなってしまっていると思います。音が綺麗すぎるというか。昔は音がもっと複雑で、色々な音が混ざっていたんですよ。それが尺八らしさだと思うんです。

ハンドメイドにこだわって製造しているバーボンMaker’s Markを味わった感想を聞かせていただけますか?

 Maker’s Markを飲むと口の中に一直線に風味が流れ込むような感じがしました。そして脳の中枢に思いもよらないバーボンの良さが、しみ込んでくるような錯覚を覚えましたよ。飲むほどに爽やかに感じて、また飲んでみたいという要求が生まれました。日々の生活の中に常にそばに置いておきたいと思うお酒ですね。

Maker’s Markは、遠藤さんが作る尺八とも通ずる部分が多いと思います。同じものを大量生産するのではなく1つ1つ異なるものを手作りで制作する理由、そしてその魅力とは何だとお考えですか?

 自然のものである竹を使っていて1本1本全部違うので、全く同じものが2本と無いという唯一無二な所ですかね。あと、吹いてると段々音が良くなるという所だとか、長いこと手元に置いておきたくなる物になると思うんです。例えば学生の頃に手に入れた物だったら、ずっと捨てないで取っておきますからね。壊れたら直して。手放せない宝物になるんですよ。

遠藤晏弘尺八工房
〒179-0085 東京都練馬区早宮4-16-12

TEL: 03-3992-3426 FAX: 03-3992-3446
http://members3.jcom.home.ne.jp

Maker’s Mark / 世界に一本しかない、あなた宛てのバーボン。

http://www.suntory.co.jp/whisky/makersmark

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