Ovall『DAWN』

January 14,2014 | Category :  News | Tag :  

New Dawn

バンドが迎える新たな夜明け

by Takahito Kohno

photo by GLOWZ

 活動休止前に、彼らの本拠地と言えるorigami PRODUCTIONSの事務所内にあるレコーディング・スタジオの中で、Ovallの3人と対峙した。新作のリリースに先駆けて、新作の楽曲を収録順に演奏するという、異例の全国ツアー=The PEEP TOURもいよいよオーラスに差しかかっていた11月中旬のことである。

 このトリオ編制バンドについて、今さら本誌読者には説明する必要もないだろうが、2006年終盤に現在のメンバー構成になり、ジャム・セッションによってその音楽性を研磨し始めて以降、Shingo Suzuki、mabanua、関口シンゴの三者は、その確かな演奏技術とミュージカル・センスを駆使してリリースを重ね、インディーの雄と言える存在になった。スタジオ作品においても、ライブの現場においても、彼らの評価は国内外を問わず日増しに高まり、その成果はセールスやライブの動員数にも如実に反映された。国内の名立たるフェスを総ナメするほどの出演歴も、このバンドの人気の高さと確かな演奏テクニックを裏付ける事実に違いない。

 だからこそ“無期限の活動休止”という一報には疑問を抱かずにはいられなかった。活動休止や引退という言葉は、ただの惹句、言うならば話題作りの狂言になることもあるが、いつだって真摯に音楽に取り組むこの3人に関しては違うようだ。

 関口シンゴ:活動休止を決定したのは新作を作り終えてからですが、その前から個々の気持ちの中にはあったんですよね。

 mabanua:モヤッとしたものがね。何よりもまずは「上手くこなせてない」というのが自分の正直な気持ちで、他の仕事が忙しいためにOvallとしての活動がないがしろになったり、誰かに任せっきりなってしまったり、そういうマズいことが起きる前に、いったん活動をやめようと思った。ソロでの仕事は自分がやらないとそこで止まってしまうから、それを優先せざるを得ない。バンド活動はたとえ自分がいなくても、他のメンバーがその穴を埋めてくれるだろうし、自分がいなくてもストップするわけではない。それがバンドの利点でもあるけど、でも自分としては、いい加減な気持ちでOvallに取り組みたくないし、この状態のまま続けて3枚目のアルバムを出したとしても、自分が納得できるクオリティーのものができない可能性があると思ったんです。それは絶対に避けたいし、だったら後悔することになる前に一度区切りをつけたほうが、みんなのためになると思った。ライブする楽しみが減ることは、残念だったり寂しかったりするけど。

 Shingo Suzuki:中途半端にはやりたくない、というのが3人の性分としてあるんです。制作やレコーディングはやめるけどライブ活動は続けるとか、そういうこともできるだろうけど、そうするとこのバンドの活動がどんどん収縮してしまうと思った。だったら思い切っていったん終止符を打って、それぞれ別の活動に注力しようと。ミュージシャンとして個々に成長/進化すれば、それが再始動したときにOvallの強みになると思うし、新たな方向性が切り拓かれることにもなると思います。

 セカンド・アルバムの『DAWN』は、ミニ・アルバム(うちひとつは限定無料配信)やGAGLE×Ovallとしてのアルバム・リリースなどはあったものの、前作『DON’T CARE WHO KNOWS THAT』から数えると、おおよそ3年8ヵ月ぶりのオリジナル・アルバムとなる。Shingo Suzukiが「僕が大半の曲のデモを作ってから、それを3人で協力して仕上げていった」と言うように、今回も基本的にはこれまでと同じ制作プロセスが採用された。「明確なアルバム・コンセプトは設定しなかった」とmabanuaは言うが、これまで何百もの会場で、何万、何十万のオーディエンスの前でライブを披露してきた彼ららしく、ライブでの再現性にこだわったアルバムになったという。

 Shingo Suzuki:今回は最初から「ライブで再現しやすい楽曲を作ろう」という目標みたいなものがありました。3人の演奏者として面を引き立たせたかったし、Ovallのライブ・バンドとしての真価を見せたかったと言えるかもしれない。

 関口シンゴ:ヒップホップのフィルターを通したベースとドラムがあって、そのうえにソウル的な音をさらに遊ばせたような僕のギターがあり、さらにエフェクターをかけたりしたものがOvallのサウンド、というイメージがあった。でも今回は、ヒップホップ・テイストがまったくない曲があったり、これまで以上にライブ演奏を意識した曲作りを心がけたり、自分も曲を書いたり。

 mabanua:ファースト・アルバムでは、エフェクトをいっぱい加えて音源の雰囲気を作ったりした。それは音源で聴くと格好いいけど、ライブではモヤモヤしてしまって表現しづらい面があったし、会場の空気や観客のノリに合わせて自由にドラムを演奏できないこともあった。それが自分たちのなかで納得できなくて「次は生演奏だけで完成できるアルバムを作りたい」という気持ちが、3人の共通意識としてあったんです。ヒップホップのビート感覚には固執せず、よりバリエーションのあるビートや、生楽器でできる音色のチェンジの仕方も採り入れました。

 今後、Shingo Suzukiは2枚目のソロ・アルバムの制作に、関口シンゴはvusikでの活動に、mabanuaはソロや別プロジェクト(Green Butter、U-zhaan×mabanua、英ロック・バンド=フィーダーのタカ・ヒロセとのユニットなど)での活動に集中していくことになる。それぞれがいち音楽家として新たな夢を追うことになるわけだが、バンド活動を休止し、その実績/定評を一時的にでも放棄してしまうことは、余程大きな意志がなければできないことだろう。次にOvallのライブを観られるのがいつになるのか、それは当の本人たちにもわからない。今はただ、さらなる経験を積んだ3人が再び結束したとき、Ovallのグルーヴがどう輝きだすのか、『DAWN』を聴きながらその答えが得られる日を待つしかない。



アルバム『DAWN』から既にラジオ局等でパワープレイとしてOAされているリード曲「Hold You feat. Yu Sakai」のMV。

Ovall『DAWN』

【CD】¥2,300 (Tax in)

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origami PRODUCTIONS

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